ERPシステム「SAP」を学んでDX化実現のカギをにぎるデジタル人材に
リスキリングを始めるならどんな目的で、どんなスキルを身につけたいですか?そしてそれはあなたにどんなメリットを与えるでしょうか?DXが社会に広がり、IT分野のリスキリングに関心が集まるなか、新たに挑戦するスキルとしてERPシステムの「SAP」が注目されています。ERPシステムは、DX化の実現において重要であり、SAPを学ぶことで需要の高いデジタル人材を目指すことができます。ここではDX、デジタル人材、ERPシステムをキーワードにSAPを学ぶ意義について考えていきましょう。
目次
リスキリングでSAPを学び、DX社会で需要の高いデジタル人材へ
リスキリングとは、社会で変化する仕事のニーズに対応するために、新たな知識やスキルを学び直すことです。経済産業省によると「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、 必要なスキルを獲得する/させること」(出典:『リスキリングとは DX時代の人材戦略と世界の潮流』-2021年2月26日リクルートワークス研究所』(経済産業省HPに掲載))と定義されています。
近年、企業におけるDX推進やコロナ禍での働き方の変化によって、リスキリングに取り組む人は年々増えています。なかでも、急速な社会のデジタル化を背景に、プログラミングやWebデザイン、RPAなどデジタル分野のリスキリングが注目されていますが、SAPもその一つです。
ERPシステムであるSAPは、各部門の情報を一元管理化できるため、リアルタイムで企業全体の情報を共有できます。そのため業務上での迅速な意思決定や部門間の連携強化など業務効率化に大きく貢献するツールです。企業のDX推進や業務効率化において、重要な役割をもつシステムだといえるでしょう。
SAPを学ぶことで、SAPの操作スキルを習得し、多くの業界で導入されているこのシステムを活用できるようになります。そして、身につけたスキルを業界の枠を越えてさまざまな分野で活かすことができ、需要の高いデジタル人材を目指すことができるでしょう。
DX化における業務効率化ツールとしてニーズが高いSAP
私たちの生活や仕事の中にはデジタル技術が多く活用されています。デジタル技術により、大量のデータの中から必要な情報を迅速に収集したり、AIなどを使って複雑な問題をスムーズに解決し、業務の効率化を図ったりすることができます。
AIチャットボットを活用したカスタマーサポートの自動化や、顧客のデータ、購買履歴を収集し、トレンドを分析したりすることがその一例です。このようにデジタル技術を活用して業務のプロセスやビジネスモデルを変革していくことがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
DXとは
”企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データと デジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデル を変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争 上の優位性を確立すること。
出典:経済産業省ウェブサイト
(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html)
企業はDXを推進することで、業務の効率化を図り、生産性をあげ、企業価値をより向上させることを目指しています。世界中でデジタル化が進む中、各企業の競争はより激化し、生き残っていくためにはDXの促進が欠かせません。
ERPシステムによる業務効率化とその市場規模
ERPシステムは、業務の効率化を図るツールの一つとして、あげられます。
ERP(=Enterprise Resources Planning)システムとは、企業の重要な資源=「ヒト・モノ・カネ」について、あらゆる情報の一元管理を可能にするシステムです。ERPシステムを導入することで、企業は点在する営業・販売・物流・経理・財務などの情報を一元管理することが可能になり、業務の効率化や意思決定を迅速に行えるようになります。
ITR Market View:ERP市場2024によると、国内52社のベンダーに調査した結果、ERP市場の2022年度の売上金額は1,687億円、前年度比11.6%増となったと発表されています。
さらに世界での市場規模は、Apps Run The Worldが発表している「Top 10 ERP Software Vendors, Market Size and Market Forecast 2023-2028」によると、2023年の1,242 億ドルから 2028 年までに 1,482 億ドルに達し、年間複合成長率は 3.6% になると推定されています。(出典:Top 10 ERP Software Vendors, Market Size and Market Forecast 2023-2028)
ERPシステムの代表格であるSAP
今後も需要が続くといえるERPシステムですが、その中で代表格になるのが、ドイツのSAP社が提供しているERPシステムです(以下SAP)。
SAPはモジュールと呼ばれる業務別分野に特化された機能群が設定されており、さらにモジュール間でデータを連携させることで、業務別にも企業全体としても業務の効率化を図ることができます。また多言語、多通貨に対応しており、世界中で導入されているERPシステムです。
SAPは、ERPシステムの世界市場において6.2%とトップのシェア率となっています。
今後も国内外で需要は高まっていくと予想されるERPシステム、なかでもシェア率の高いSAPについて学ぶことは、今後価値のあるデジタル人材への成長につながるといえるでしょう。
日本における「デジタル人材」の不足
しかしながら、世界の中で日本はDXの取り組みに遅れをとっているのが現状です。スイスにある国際経営開発研究所が2023年に発表した「世界デジタル競争力ランキング」では、世界64ヶ国のうち日本は過去最低の32位でした。このように他国に比べ日本がデジタル技術を十分に活用できていない背景として、デジタル人材の不足が原因の一つとしてあげられます。
デジタル人材とはデジタル技術を活用して企業に新しい価値を与えることができる人材のことを指します。独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)が発表した「DX動向2024」をみると、日本は米国に比べ、DXを推進する人材の「量」の確保が大幅に不足していることがわかります。
この状況から、DXを推進している企業にとってデジタル人材は需要の高いものといえるでしょう。そして業務の効率化に大きく貢献するSAPは今後も導入率は増えていくと予想されます。SAPの知識を身につけて、日本そして世界において必要とされるデジタル人材を目指しましょう。
SAPを学ぶことで得られるDX社会に必要なスキル
IT未経験者がSAPを学ぶことで得られるスキルはSAPの知識だけではありません。学習の過程で幅広く学べることもあります。
SAPの特徴から得られる業務知識や業務フローの知識
SAPではモジュールという業務分野別の機能群が設定されていて、そのモジュールの知識を深めることで各部門の業務知識や業務フローを理解することができるようになります。
例えばFIという会計のモジュールを学習していると、経理や会計の部署がどのような業務をしているのか全体像が掴めてきます。また仕訳の知識も必要になってくるので簿記についても知るきっかけができます。
DX社会でデジタル人材に必要不可欠な基本的PC、ITスキル
学習や業務では基本的に全てPCで行うため、PCを扱う際に必要なPCスキル、業務を行うために必要なITスキルが身につきます。
また、学習方法や業務の仕方によってはプロジェクト間でオンラインでのコミュニケーションをとることがあり、Slackやchatwork、teamsなどのビジネスチャットを利用する機会も多いでしょう。最近ではリモートワークなどで幅広く利用されていますが、このようなビジネスに必要なツールのスキルについても身につけることができます。
需要の高いデジタル人材にランクアップするためのSAP関連スキル
学習の過程でスキルを身につけるのと並行して、SAPに関するより深い知識を得ることで、さらに需要の高い人材を目指すことができます。
SAPのプログラミング言語をABAPといいますが、SAPのエンジニアやコンサルタントを目指すなら身につけておくべきスキルです。深く学ぶことで、よりSAPに関して専門的な知識が身につきます。
また、SAPは多言語に対応しているため、英語力を高めることで、より価値のある人材を目指せます。さらに、SAPのエンジニアやコンサルタントには分析力やコミュニケーション力も必要とされるため、意識してスキルを深めていくこともおすすめします。
SAPを学ぶことで、「今」に見合ったデジタルリテラシーを高めよう
近年デジタル化が進み、私たちの仕事の中でデジタル技術を利用しない場面はほとんどありません。今後もデジタル技術は進化し続け、仕事がさらに効率化されるなか、デジタル技術の知識は必要不可欠になるでしょう。
デジタルリテラシーとは、デジタルを扱うすべての人が知っておくべき知識や考え方であり、いたるところに存在するデジタルについて適切に理解し、自ら表現できる力のことをいいます。(出典:デジタルリテラシー協議会ホームページ)
デジタルリテラシーはデジタルを作る人、使う人両方に必要な考え方です。デジタルリテラシーを身につけることで、デジタルに対する不安を軽減したり、デジタルでの様々な活用法を考えることで、あらたな可能性を広げることにつながります。日々増え続けるデジタルの活用事例や知識を習得し、継続して学び続けることが大切だといえます。
転職や就職、または現在の仕事からのステップアップに向けて、DX化で需要が高まっているSAPを学ぶことで、これからのデジタル社会に見合ったデジタルリテラシーを身につけることができるでしょう。
全国の自治体で広がる女性デジタル人材育成事業を活用してリスキリングに挑戦
DXが広がるなかで、女性のデジタル人材育成事業が全国各地で取り組まれています。内閣府男女共同参画局は令和4年に、女性デジタル人材育成プランとして今後3年間集中的に、関係府省が連携して女性デジタル人材の育成に取り組むことを決定しました。
この取り組みの背景には、コロナ禍での就業面への大きな影響、特に非正規雇用労働者の厳しい状況が続いている一方で、情報通信業界では安定した雇用が続いており、他の業種においてもデジタル人材へのニーズが高まっているということが挙げられます。そのため女性のデジタルスキルの向上と就労支援が重要視されるようになりました。
さらに女性デジタル人材育成プランを通して、人生100年時代を生き抜くための女性の経済的・精神的自立やデジタル分野でのジェンダーギャップの解消にも期待が寄せられています。
でじたる女子活躍推進コンソーシアム
現在多くの自治体で、こうした取り組みが行われているなか、株式会社MAIAと、一般社団法人グラミン日本、SAPジャパン株式会社の3社が設立したでじたる女子活躍推進コンソーシアムでは、各自治体と連携し、該当自治体エリア在住の女性を対象にSAPやRPAなどのニーズの高いIT関連スキル習得の支援を行っています。
2024年現在で、約20近い自治体と連携したプロジェクトが進んでおり(既にプロジェクトが終了したものも含む)、たくさんの女性のデジタル人材が育成されています。この取り組みは内閣府男女共同参画局の女性デジタル人材育成プランの事例集にも掲載されています。
デジタル人材が不足する中、女性のあいだでこうしたデジタルスキルのリスキリングが広まっています。その中でもSAPについて知識を習得することは、システムの知識だけでなく、学ぶ過程で得られる幅広い知識やスキルもあり、より需要の高いデジタル人材を目指すこともできるリスキリングといえるでしょう。