IT未経験からでも目指せるSAPテスターとは? テストの役割とテスター業務を解説

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SAPに関わる仕事の中で、IT未経験でも目指せるテスターという業務があります。テスターとは、完成したシステムが正常に動作するかテストする業務のことを指します。ここではSAPが導入されるときの流れを追いながら、一般的なシステム開発におけるテストの役割、テスターの業務について解説します。テスターとして実務経験を積みスキルを習得することでその先のキャリアの選択肢も広がり、需要が高まっているSAP人材を目指していくことも可能になるでしょう。

目次

    SAP導入のプロジェクトにおけるテストの役割とは

    SAPを導入する際、一般的には以下の図のような流れでプロジェクトが進んでいきます。一つの業務のまとまりをフェーズといいますが、テスターが行うテスト業務は開発後のフェーズになります。

    フェーズごとにおこなわれる大まかな業務内容は、以下の通りです。

    • 企画・構想:何の為にSAPを導入するのか、会社のシステムをどのようにしていきたいかをまとめ、プロジェクトの指針を決めていく。
    • 要件定義:ユーザー企業の業務内容を、SAP標準機能にマッチする業務、しない業務に整理する。マッチしない業務を、SAP標準機能に合わせるために業務改革をするのか、SAPを業務に合わせるためアドオン開発(追加で機能を開発する)をするのかを決める。
    • 設計:要件定義でアドオン開発をすることに決まった機能の設計。基本設計と詳細設計がある。
    • 開発:設計をもとにABAP(SAPでのプログラミング言語)を用いてプログラム開発をする。
    • テスト:アドオン開発をした機能の、単体テストや複数機能を結合して正しく連携できているのか確認する結合テスト、また業務プロセスが問題なく実行されるかのシステムテスト、さらにユーザー企業側による受け入れテストがある。
    • 移行:現行システムからのデータや業務の移行を行う。
    • 運用保守:システムの本稼働後のシステムエラー対応やユーザーへのフォロー。

    テストのフェーズでは、アドオン開発した機能が、要件定義や設計で示した内容を満たしているかをテストします。一般的には、事前にテストシナリオやチェック項目が作成され、それに沿ってテストをしていく流れです。

    ソフトウエア開発に欠かせないテスターの業務とは

    テストのフェーズでは、業務が下図のようなソフトウエア開発のV字モデルに沿って進められます。

    上図のように、ソフトウェア開発では、要件定義、設計、開発の工程が終わったあと、設計フェーズでの詳細設計を基に単体テストが行われ、基本設計を基に結合テスト、要件定義を基にシステムテストが行われるといったように要件定義、設計フェーズでの内容がきちんと反映されているかを確認していく作業が必要となります。

    ソフトウェア開発でおこなわれるテストとテスターの業務

    テスターの業務は、テスト設計書やテスト仕様書に用意されているテストケースに沿って、機能が正しく動作するか、エラーがでた場合はどのようなエラーなのかを確認していく業務です。

    テストの業務は

    1. テスト設計
    2. 単体テスト
    3. 結合テスト
    4. システムテスト
    5. 受け入れテスト

    に分けられます。

    ①テスト設計

    開発した製品の品質を確認するために様々な視点からのテストケースを考え、要件定義で示した内容を正しく理解した上で適切なテストケースをテスト設計書に落とし込んでいく。

    ②単体テスト

    一つ一つの機能が正しく動作するかのテストで、プログラミングした関数単位などの小さな単位でテストを行う。

    ③結合テスト

    機能同士を結合して行うテスト。結合しても想定通りに動作するか、エラーが発生しないかを確認する。

    ④システムテスト

    一連の流れを通して、正しく動作するか、最初の要件定義や設計での条件を満たしているかをテストする。

    ⑤受け入れテスト

    実際にSAPを使って業務が問題なく進められるのかを確認する。

    ②単体テスト③結合テスト④システムテストでは、設計されたテストケースに沿って一つ一つ実行していき、想定されたとおりに動作しているかを確認します。もしエラーが出た場合はエビデンスを残し報告します。テスターは主にこの業務を担当します。

    IT未経験なら第一ステップとしてテスターを目指す

    SAP人材の育成には、高いスキルや経験が必要なため、長期間かかると一般的にはいわれています。しかし、SAP導入のプロジェクトをいくつかに分解していくと、IT未経験でも比較的短期間で習得できる領域もあり、テストもそのひとつです。

    前述した通り、テスターの業務は設計されたテストケースに沿って一つ一つテストを行っていき、エラーがあればエビデンスを残しそれを報告していく作業になります。

    テスターに求められるスキルには、次のようなものがあげられます。

    • OAスキル:テスト設計書や仕様書はエクセルで作られていることが多く、オフィスソフトを使った基本的な文書作成能力が求められる。
    • 集中力:細かなテストが含まれているため集中力が必要とされる。
    • コミュニケーション能力:チームとの協力や、エラーの報告をする際に情報を正確に伝えるためのコミュニケーション能力が必要とされる。

    このようにテスト業務は、専門的で深い知識が求められる業務ではないため、IT未経験者であれば、まずはテスターから目指すことをおすすめします。

    テスターのキャリアパス 経験と知識を積みテストエンジニアへの道も

    テスターとして実務経験を積んだら次にどんなキャリアがあるのでしょうか。

    テスト業務ではテスターの他に、テスト設計をしたり、テスト業務全般を担当するテストエンジニアがいます。その他にも、テスト業務を担当するチームをまとめるテストリーダーやテストマネージャーという業務もあります。

    以下はテストエンジニアに関連する資格です。

    他にも、ソフトウエアの基礎知識や開発スキル、そしてプログラミングスキルを習得することで、さらなるステップアップを目指せるでしょう。

    IT未経験からSAPテスターを目指せる「でじたる女子+」のSAPコース

    株式会社MAIAが運営する「でじたる女子+」では、IT分野のスキルアップを目指す女性のために様々なe-learningプログラムを提供しています。SAP講座はそのひとつで、SAPのテスターを目指すための教育プログラムとなっています。

    この講座では、受講者は業務知識を学びながら、実際にSAPのシステムを使ってデータ登録や伝票作成を行います。基礎を学んだあとは、SAPのテスター業務を想定した工程に取り組み、プログラムに不具合がないかなどの模擬テストをおこないます。エラーが発生した場合は、テスト設計書にエビデンスをつけて報告(提出)し、採点結果を見返したあと次のテスト演習に取り組んでいきます。

    このように実際のテスト業務の流れを学ぶことにより、実際にプロジェクトに参画した場合の不安や心配も軽減されるでしょう。

    DX化により需要が高まっているSAP人材にチャレンジする第一歩として、IT未経験から着実に基礎知識を習得し、テスターを目指すことから始めてみてはいかがでしょうか。

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