50代女性に向くリスキリングとは 強みを活かしてセカンドキャリアにつなげよう

リスキリング

50代で「自分のために時間を使える/使いたい」となってきた女性は多いのではないでしょうか。日本では今、デジタル化の進展などを背景に、働く人の学びなおし「リスキリング」が推進されています。現状の働き方を変えたい、新しい仕事に挑戦したい、あるいは長年のブランク後仕事に復帰したいなど、「セカンドキャリア」を見据えて、リスキリングを始めてみませんか?

目次

    50代女性は「働きざかり」のステージにいる

    あなたは「50代女性は働きざかり」と聞いて、どのように感じるでしょうか?

    50代女性をとりまく就業の状況は、この十数年間でも大きく変化してきています。令和4年(2022)の女性の労働力率は、平成24年(2012)と比較して50代前半で6.6ポイント、50代後半で11.2ポイント上昇しています。

    女性の労働力率を年代別に表すこのグラフは、長らく結婚や子育てに忙しいと思われる30代に谷があり、その後復職によると考えられる上昇があって50代後半で下降するという「M」の字を描いていました。

    今では、結婚後や子育て中も仕事を続ける女性が増えたこと、50代女性の仕事上での活躍が増してきていることがわかります。また、女性全体で見ても、令和4年の女性の労働力率は、比較が可能な昭和43年以降、20代前半から60代前半までの年代すべてにおいて過去最高の水準だったということです。

    出典:「令和4年版 働く女性の実状」厚生労働省

    配偶者のいる女性の労働力率も、平成24年にくらべると11.3ポイントと大きく上昇しています。十年前、数十年前ならば、「50代女性は働きざかり」といえば多くの人が異を唱えたかもしれませんが、今は勤続している女性もいれば、長いブランクから仕事に復帰して活躍する女性も増えているのが現状といえるでしょう。50代女性の労働力率は、これからも高くなっていくと考えられます。

    出典:「令和4年版 働く女性の実状」厚生労働省

    「リスキリング」は世界経済のキーワード その目的とは?

    世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)において「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」という「リスキル革命」が提唱され、「第4次産業革命により、数年で8000万件の仕事が消失する一方で9700万件の新たな仕事が生まれる」という予測がなされてから、経済において時代のキーワードとなったリスキリング。 最近は、新聞や週刊誌のみならず、ファッション誌にまでこの言葉を見かけるようになりました。

    「第4次産業革命」とは、ICT(情報通信技術)の発達、Iot(モノのインターネット)、ビッグデータ、AIの技術革新によって、新たな経済価値が生まれていることを指します。リスキリングとは、日本では「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」(出典:経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」)と定義されていますが、現在ではITスキルやデータ分析のスキル習得が主になっているといえるでしょう。

    わたしたちの生活は第4次産業革命のただなかにあり、IotやAIを活用したICTの利用、ITスキルの習得は、仕事・ビジネス領域だけでのものとはいえません。リスキリングという”学びなおし”は、もはやライフスタイルの一部となりつつあるのかもしれませんね

    セカンドキャリアを築くために

    リスキリングには、従業員のスキル獲得をDX化を進めるために企業が主導するリスキリングと、就業・転職などを目指して個人で行うリスキリングがあります。

    個人で行うリスキリングは、自ら目標や目的によって学ぶべきスキルを決める”学び直し”。その動機となりうるのは、「これまでの働き方を変えたい」「よりやりがいのある仕事がしたい」「新しい職業に挑戦したい」など。つまり「セカンドキャリア」を築くため、といえます。

    セカンドキャリアとは、もとはプロスポーツ選手の選手引退後の職業や、定年後の職業、早期退職後の再就職など、「第二の人生での職業」といった意味でとらえられていましたが、終身雇用制が主流ではなくなりつつある現在では、誰にでも起こりうる「キャリアチェンジ」のうち、とくに将来のキャリアプランを見据えたもの、キャリアの大きな転換点となるものといった意味あいで使われるようになりました。

    50代でセカンドキャリアについて考えるとき、この10年間での情報通信やデジタル技術の進歩を振り返ってみましょう。スマートフォンの普及、eコマースの発展、クラウドの利用……。もし、仕事をしていないブランク期間が10年以上あったり、仕事を続けている場合でも10年間職種が変わらない(仕事内容が変わらない)状態であったとしたら、リスキリングがセカンドキャリアを築くカギになるといえます

    とはいえ、個人で学ぶリスキリングは、目標が漠然としている場合が多く、「何を学ぶのか」というテーマ選びが難しいですよね。ここでは、おもにIT初心者がITスキルの獲得を目標に設定する場合で、

    • 楽しみながら学ぶ
    • プログラミングやAIの基礎を学ぶ

    という視点から、リスキリングのテーマをいくつかご紹介します。

    リスキリングのテーマ選び~楽しみながら学ぶ

    長く続ける、やり遂げるには「楽しみながら学ぶこと」が大切ですよね。趣味としても楽しめ、プライベートでも役立てられるスキルをご紹介します。

    動画編集、画像加工

    これまで、スマートフォンやデジタルカメラで撮影した写真で年賀状やアルバムを作ったこと、あるいは、結婚式やお祝いなどのイベントで、友人や同僚がその日のために制作した動画を披露して盛り上がったことなどがありませんか? プライベートでも楽しみのために使えるスキルが動画編集や画像加工です。

    デジタル技術の発達によって、最も身近に起こった変化のひとつといえるのが、デジタルコンテンツの普及です。わたしたちはインターネットを通して日常的に、音楽や動画、ゲームなどのデジタルコンテンツの配信を受けたり、なかには発信する人も多くいるでしょう。

    企業などから発信する情報(Webサイト、PR動画、オウンドメディアなど)でも、同様にデジタル化が進んだ今、デジタルコンテンツ(画像や動画)に関する業務を担当できる人材の需要も高まっています

    具体的なリスキリングの方法は、クリエイティブ系ツールの使い方を学ぶこと。クリエイティブ系ツールとしては、Adobe photoshop、Adobe illustrator、canvaなどがあげられます。

    Webデザイン、Webマーケティング

    企業にとってWebサイトをもつことは、社会的認知度や信用度をあげる強力な武器となってきました。同時に、「ローコード」や「ノーコード」でWebサイトをデザインできるソフトウェアやツールが開発され、世界的に普及しています。

    HTML、CSS、JavaScriptなどのコーディングについて深い知識がなくても、オリジナル性の高いWebサイトを作ることができるWordPress、Studio、Wixなどの使い方を学ぶことは、将来的にもニーズが高いスキルを獲得できるリスキリングのテーマといえるでしょう。

    また、クリエイティブツールを駆使することでデザイン性をあげる、HTML、CSS、JavaScriptを学ぶことでオリジナリティを高めるカスタマイズをするなど、さらなる学びのきっかけ、学び続けるモチベーション維持につながるといえます。

    マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)の取得

    WordやExcel、PowerPointなど、マイクロソフト社のMicrosoft Office製品は、ビジネスで必要不可欠といえるツールです。これらのツールを使いこなすスキルを証明するMOSの取得をリスキリングの目標とすれば、転職や就業に有利でしょう。これらのツールは、プライベートでも、家計の管理や趣味の集まりでの名簿作りなど役立つ場面が多々あります。

    リスキリングのテーマ選び~プログラミングやAIの基礎を学ぶ

    業務を効率化するためのITスキルの習得は、人手不足が現状の今、もっともニーズが高い人材になるためのリスキリングといえます。IT初心者でも取り組みやすく、プログラミングやAIといった高度なITスキルの基礎を学ぶことができる実用的なスキルを紹介します。

    RPA

    定型業務を自動化する技術。RPAツールを使い、プログラミングコードを書かずに(ノーコード、ローコード)、エクセルシートやワードファイルなどを使った書類作成、メール送信などを自動化するロボットを作ることができます。プログラミングコードは書かないものの、プログラミングの基礎となる考え方なども身につけることができます。

    RPAはおもに事務作業を自動化するため、事務職などを経験していると、自動化する業務の流れがイメージしやすく、ロボット開発に活かせるでしょう。

    おすすめ記事

    プロンプトエンジニアリング

    「プロンプト」とは、AIとの対話やコンピュータシステムを操作するときにユーザーが入力する指令や指示のことです。人間と言語を通じて対話するようにタスクをこなしたり、機械翻訳できたりする生成AIを大規模言語モデル(LLM)といいますが、ユーザーがLLMに入力するプロンプトを最適化するのがプロンプトエンジニアリングです。

    日本語や英語など「自然言語」を使って、AIを使いこなす工夫をかさねるため、言語能力の高さや文章力がプロンプトエンジニアの適性に影響するともいわれています。

    生涯のキャリア・プランをたてよう

    リスキリングやキャリアアップ、セカンドキャリアについて考えるときには、これまでのキャリアや経験の見直しが必要です。

    厚生労働省が推進する「ジョブ・カード制度」をご存じでしょうか? 「ジョブ・カード」は、「キャリアプランシート」「職務経歴シート」「職業能力証明シート(免許・資格/学習歴・訓練歴)」から成ります。

    在職者や求職者、就業経験がない人など、個人の状況に応じてシートの使い分けをしながら、ジョブ・カードを記入していくことで、これまでの経験を振り返り、自分自身の能力やスキルを整理します。これによって、自分の強みや活かせるスキルに気づいたり、人生で大事にしたい価値観を見つめたり、必要な「学び」について考えることができる、というものです。

    自分で自分自身の人生を振り返ることは、なかなか難しい作業ですよね。そこで、このジョブ・カードのようなツールを使うことは有効ですし、ジョブ・カードをもとにキャリアカウンセリングなどを受ければ、さらに自分のキャリアについて客観的にとらえることができ、「これからどのようにしたいか、していくのか」が見えてくるでしょう。

    フリーランス、在宅ワークという選択肢

    長いブランクから仕事に復帰するときは、出勤によって生活習慣を大きく変えることになり、それが就職へのモチベーションを下げる場合もあります。

    現在は、テレワークを導入している企業も増加し、それに伴って個人に委託されるテレワークが可能な業務も増えてきました。外に出て働くだけでなく、自宅で「フリーランス」や「個人事業主」として「在宅ワーク」をする、という選択肢もあります。

    仕事と家事や介護との両立に不安を感じる方は、無理のない範囲での在宅ワークから始めてみるのもいいでしょう。女性向けの在宅ワークについては以下の記事で解説しています。ぜひ在宅ワークを探す際の参考にしてみてください。

    豊富な人生経験がある50代の女性は、様々な仕事で重宝されます。主婦としての経験が活かせる仕事も世の中にはたくさんあります。50代は、これまでに身につけてきた自分の「強み」となる部分を見つけて、必要な「学び」でスキルを伸ばしたり、能力の幅を広げたりすることもできる年代です。自信をもって、自分らしいセカンドキャリアを構築していきましょう。

    記事一覧に戻る