近年、フリーランスとして働く人が増えてきました。
フリーランスは、会社や団体に属さずに個人で自由に仕事をする人のことを指します。
雇われではなく、自分で契約を取ってきて仕事ができるので、自分のペースで働くことができるといったメリットがあります。
そのため、多くの人が独立してフリーランスに転身していますが、独立・起業したほうが収入の面でもメリットは大きいのか気になりますよね。
そもそも、フリーランスの年収はどのくらいなのでしょうか?
会社員として働くより年収は増えるのか、反対にリスクはないのか、社会保険や税金はどうなるのかなど、フリーランスの年収の相場について詳しく解説します。
また、フリーランスとして年収をアップするためのコツもご紹介するので、フリーランスとして働いている方、あるいはこれからフリーランスになろうと考えている方はぜひ参考にしてみてくださいね。
フリーランスの平均年収の傾向
まず、近年のフリーランスの収入の状況を見てみましょう。
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2020」が、一般的な会社員のフルタイムに近い月間就業時間140時間を基準に、140時間以上働いているフリーランスと、140時間未満のフリーランスとで比較したデータでは、以下のような結果が出ています。
就業時間が140時間未満のフリーランスは、年収200万円未満が最も多く36.9%を占めています。
年収800万円以上は7.1%と割合が少ないことがわかります。
次に、140時間以上働いたフリーランスの年収を見てみましょう。
年収400~600万円未満が最も多く、22.7%を占めています。
また、年収600~800万円未満が15.4%、800万~1000万円未満は12.9%と、就業時間140時間未満のフリーランスに比べて高収入を得ている割合が多いことがわかります。
全体としてみても、半分以上が年収400万円以上となっています。
さらに、フリーランスの職種によっても年収は大きく異なります。
年収400万円未満は、クリエイティブ・Web・フォト系が23.6%、出版・メディア系が16.7%と多数を占めています。
年収800万円以上の高収入が得られる職種は、エンジニア・技術開発系が29.8%、コンサルティング系が22.6%となっています。
特にITエンジニアは世界的にも高収入が得られる傾向があります。
では、会社員の年収と比べてみましょう。
国税庁がおこなった「平成30年分 民間給与実態統計調査結果」によると、以下のような結果が出ています。
全体的な年収の平均は441万円で、男性は545万円、女性は293万円となっています。
この結果から比べてみると、フリーランスの年収は会社員が得ている年収とそこまで大差がなく、むしろフリーランスの方が高収入を得ているケースも多いです。
「年収」は「手取り」ではない!手取りに直すといくらに?
会社員も給与の総支給額から社会保険料や税金が引かれますが、フリーランスも同じです。
フリーランスは、業務委託契約や請負契約で案件を受注することがほとんどですが、「報酬=売上」となります。
その売上から、経費や税金、社会保険料などを差し引いたのが手取り額です。
例えば、フリーランスで年収500万円で、経費が50万円、社会保険料が40万円、税金が50万円だとします。
このように、年収と手取り額はまったく異なります。
具体的にどのようなものが引かれるのかをご説明すると、
●所得税
●住民税
●個人事業税
●消費税(年収1,000万円を超えた場合)
●国民健康保険料
●国民年金保険料
●介護保険料(40歳以上から)
これらが引かれることになります。
所得税
所得税は、1年間の所得に応じて国に納めなければいけない税金です。
所得税には「累進課税制度」が適用され、所得が高ければ高いほど、納める税金も高くなります。
住民税
住民税は、住んでいる都道府県と市区町村に納める税金です。
所得に応じて課せられる「所得割額」と自治体ごとに一律で課せられる「均等割額」から算出されます。
個人事業税
個人事業主(フリーランス)が納めなければいけない税金です。
ただし、すべての個人事業主が納めるわけではなく、限定的な業種と一定の所得(年間290万円)を超えた人に対して課せられます。
消費税(年収1,000万円を超えた場合)
フリーランスの消費税は、前々年の課税売上高が1,000万円以上の場合に課せられます。
消費税の内訳は、国税の消費税率が7.8%、地方消費税率が2.2%、合計10%を納める義務があります。
国民健康保険料
フリーランスは、国民健康保険に加入する必要があります。
保険料は、前年度の所得や住んでいる地域によって異なります。
国民年金保険料
フリーランスとして独立すると、国民年金保険への加入が必要になります。
国民年金保険料は毎年改定がありますが、令和2年4月~令和3年3月分の国民年金保険料は、16,540円(月額)です。
介護保険料(40歳以上から)
フリーランス、会社員関係なく、40歳以上の場合に支払う義務があります。
一生涯払い続けるもので、各自治体によって保険料は異なります。
このように、年収からこれらの税金や社会保険料が引かれます。
引かれた手取り額がいくら位になるのか、一例を下の表でご覧ください。
(個人事業主 税金/社会保険料計算シュミレーションで算出。青色申告した場合)
フリーランスのメリット・デメリット
フリーランスは、自分のペースで仕事ができるというメリットが大きいですが、金銭面においても様々なメリット・デメリットがあります。
まず、最大のメリットは「収入アップが見込める」ということでしょう。
会社員は、成果を上げたとしてもすぐに収入がアップすることはありません。
社内の評価制度によって成績や能力を評価されて給料が決められるので、成果と直結するわけではありません。
それに対してフリーランスは仕事をすればするほど収入が増え、がんばり次第で収入をコントロールすることも可能です。
しかし「収入」よりも「稼いだ利益」が大事になります。
「売上=収入」のことですが、「収入=手取り」ではありません。
フリーランスになると、会社員とは違って外注費や通信費などの経費がかかり、収入から経費を引いた金額が手取りとなるイメージです。
極端な例ですが収入1000万円でも経費が990万円だと利益は10万円です。
一方で収入が300万円でも経費が30万円だと利益は270万円になり、1,000万円に比べて収入は少ないですが利益は多くなります。
収入を増やすのは大事ですが、経費とバランスを取りながら売上を伸ばせば手取りも増やすことができます。
その一方、「収入が安定しない」というデメリットも挙げられます。
フリーランスは、毎月自分で仕事の案件を受注して売上を作らなければいけません。
固定給の会社員と違い、仕事がなければ収入はゼロになるということです。
また、税金や社会保険料など差し引かれる額が非常に大きいのもデメリットのひとつです。
先ほどの表でもわかるように、特に所得税が大きく引かれてしまうので、同じ年収であっても、会社員のほうが手取り額が多くなることもあります。
フリーランスとして年収をアップさせるには?
フリーランスとしてより年収を増やすために必要なことはなにか、いくつかご紹介します。
●常にスキルをアップデートさせ続ける
●プレゼンスキルや提案力を身につける
●仕事の効率を高める環境づくりや工夫を怠らない
●積極的に人と繋がりを作る
●スケジュールや納期など、時間の管理をする
常にスキルをアップデートさせ続ける
フリーランスとして働くためにまず必要なことは、スキルです。
AI関連技術や専門性の高いスキルをつけることで、高収入も目指せます。
さらに収入アップをするためには、そのスキルを常にアップデートさせ続けることが重要です。
新しい知識や技術を身につけることで、今までできなかったような仕事の案件を受注することが可能となります。
専門性の高いスキルが求められる案件は、高単価・高収入のものが多いです。
そのため、スキルをアップデートさせ続けることで、収入の幅が大きく広がる可能性が期待できます。
プレゼンスキルや提案力を身につける
フリーランスとして仕事をするには、自分で仕事を受注しなければなりません。
クライアントとしっかり話をしてニーズを読み取り、「この人にお願いしたい」と思ってもらえるようなプレゼンテーションができるかがポイントです。
例えば、大きな会社ではできないことができるといった差別化や、自分だからこそできることをアピールすることが大切です。
それに加え、クライアントから言われたことだけをこなすのではなく、さらに良くするためにはどうすべきかなどを提案する力があると、クライアントからの信頼や期待も大きくなり、次の仕事へも繋がりやすくなります。
仕事の効率を高める環境づくりや工夫を怠らない
フリーランスは会社員と違って自由度がとても高いです。
しかしその反面、業務のほとんどを自分ひとりでやらなければいけないため、時間やタスクに追われて精神的に苦しい状況に陥る可能性もあります。
そのため、仕事の効率化を常に考える必要があります。
例えば、
●仕事のサイクルやルールを作る
●TO DOリストを作ってタスク管理をする
●仕事をする場所を決める
など、自分の生活リズムや性格に合わせて効率よく仕事ができる状態を作るといいでしょう。
また、仕事をする際の環境も重要です。
作業をする際に不要なものは排除したり、リラックスできる空間にしたり、集中できる環境作りが仕事の効率アップに繋がります。
積極的に人と繋がりを作る
会社員として働いていると、自然と人脈は広がりますよね。
しかし、フリーランスになると個人で仕事をするので、人との接触が少なくなってしまうことがあります。
仕事の案件を受注するためにも、人脈が必要です。
クライアントと築いた信頼関係からさらに人脈が広がり、新しい仕事へ繋がる可能性も大いにあります。
また、情報収集ができたり意見やアドバイスをもらうことで良い刺激にもなります。
そのため、交流会やセミナーに参加するなど、積極的に人と繋がりを作れるように行動することも必要です。
スケジュールや納期など、時間の管理をする
フリーランスが最も注意すべきことは「納期」です。
クライアントに指定された納期から遅れてしまうと、一気に信用を失いかねません。
継続して仕事をもらえなくなれば、その分収入が減ってしまいます。
そうならないためにも、スケジュールや時間の管理を徹底する必要があります。
案件の獲得から作業、納品まですべて一人でおこなうため、納期までのスケジュールをしっかり把握しておきましょう。
また、複数のクライアントからの案件を請け負う場合は、優先順位を決めることも重要です。
●納期はいつ?
●仕事量はどれくらい?
●いつ頃完了できる仕事なのか?
こういったことを意識して、優先順位をつけながらそれぞれの納期までにできるだけ余裕をもたせて仕上げておくといいでしょう。
まとめ
この記事では、フリーランスの年収や年収アップに必要なことについてご紹介しました。
会社員に比べて、働き方の自由度や収入を増やせる可能性が高いのがフリーランスの最大の魅力です。
しかし、仕事がなければ収入がない、税金や社会保険料など引かれる額が大きいといったデメリットもあります。
それでも、これから多くの人がフリーランスという生き方を選んでいくのではないかと予測されています。
自分の好きな働き方ができる今の時代だからこそ、フリーランスとしての生き方がますます注目されている中、あなたはどんな生き方を望みますか?
会社員として働くことも、フリーランスをいう道を選ぶことも、どちらもあなた次第です。
この記事が、今後の働き方の参考になれば幸いです。