女性の活躍がこれからの社会に必要だというけれども・・・
なぜ女性活躍を推進するのか?
女性活躍に取り組むことでどんなメリットがあるのか?
企業として何ができるのか?
2022年(令和4年)4⽉から「女性活躍推進法」の対象企業が拡充されます。
そんな中、自社は何をしたらいいのか迷っている経営者の方に向けて、女性活躍推進法の概要や女性活躍に取り組む課題やメリット、何から取り組めばいいかなど簡単に説明します。
女性活躍推進法とは?
「⼥性活躍推進法」とは、⼥性の個性と能⼒が⼗分に発揮できる社会を実現するため、国、地方公共団体、⺠間事業主(一般事業主)の各主体の⼥性の活躍推進に関する責務等を定めた「⼥性の職業⽣活における活躍の推進に関する法律」のことを言います。
厚生労働省の女性活躍推進法ページによると、女性活躍推進法の内容は次のように書かれています。
「うちの会社は従業員301人もいないから女性活躍推進法に関係ないよね。」
そう思われるかもしれません。
しかし、令和元年5月29日、女性活躍推進法等の一部を改正する法律が成立し、令和元年6月5日に公布されました。
今回の改正の一つとして、一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大されます(令和4年4月1日施行)。
ということは、労働者が101人以上いる企業は全て対象になるということです。
したがって、労働者100人以下の中小企業は努力義務ですが、これからの時代、女性活躍を推進する企業が増えていく流れになることを踏まえて、今のうちから取り組んでおくとよいでしょう。
なぜ女性活躍推進は必要なのか?
厚生労働省の「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」というパンフレット(PDF)によると、日本における働く⼥性の現状は、働く場⾯において⼥性の⼒が⼗分に発揮できているとはいえない状況にあると伝えています。
こちらの図をご覧ください。
出典:「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000614010.pdf)(2021年8月29日に利用)
⼥性の就業率(15歳〜64歳)は上昇していますが、就業を希望しながらも働いていない⼥性(就業希望者)は約237万⼈に上ります。
また、第1子出産を機に約5割の⼥性が離職するなど、出産・育児を理由に離職する⼥性は依然として多く、出産・育児後に再就職したとしても、パートタイム労働者等⼥性雇用者における非正規雇用労働者の割合は56.0%であります。
さらに、管理的⽴場にある⼥性の割合は約15%(平成30年)と、近年緩やかな上昇傾向にあるものの、国際的に⾒ても低い状況となっております。
昨今、日本は急速な⼈⼝減少局⾯を迎えており、将来の労働⼒不⾜が懸念されています。
国⺠のニーズの多様化やグローバル化に対応するためにも、企業等における⼈材の多様性(ダイバーシティ)を確保することが不可⽋となっており、⼥性の活躍の推進が重要と考えられます。
日本は男社会がまだまだ根強くありますが、人口減少による働き手の減少を食い止めるためにも、女性活躍を推進することで人材の多様性や将来の労働力を確保することが求められているのです。
しかしながら、女性活躍推進を行っている企業はどのくらいいるのでしょうか?
厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」によると、現在の登録企業数はデータ公表企業14,757社、行動計画公表企業19,116社(2021年8月29日現在)となっています。
日本の企業数は、中小企業庁の「2020年版 中小企業白書・小規模企業白書 概要」によると、2016年の企業数で359万社となりますから、女性活躍を推進している企業はまだまだといえるでしょう。
女性活躍を推進することは、⼈材の確保・定着や社員のモチベーションの向上など、多岐にわたり企業にとって大きなメリットがあると言われていますが、なかなか前に進めない事情があるのかもしれません。
今後、企業自身にとっても、採用や育成等に多大なコストを投じた⼥性社員が能⼒を⾼めつつ継続就業できる職場環境にしていくことは、重大な課題となるでしょう。
女性活躍推進を阻む課題
前章でもお伝えしたように、日本の企業数に対して、女性活躍推進法のデータ公表企業や行動計画公表企業がまだまだ少ないのは、現在の対象企業が常時雇用する労働者が301人以上という面からかもしれません。
令和4年4月1日に施行される改正では、対象企業が常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大されます。
これを機に、女性活躍推進を阻む課題について明らかにし解決していけるようにしましょう。
女性活躍推進を阻む課題として3つ挙げられます。
②ワークライフバランスの環境が整っていない
③女性管理職のロールモデルがいない
①キャリア形成に時短勤務は除外される
女性活躍推進を阻む課題の1つ目は「キャリア形成に時短勤務は除外される」ことが挙げられます。
出産・育児後に再就職した場合、パートタイム労働者等⼥性雇用者における非正規雇用労働者の割合は56.0%というデータがあります。
そのことから大半の女性が産休育休を機に時短勤務などを余儀なくされ、能力の有無関係なく、キャリア形成から除外されてしまうという現実があります。
②ワークライフバランスの環境が整っていない
女性活躍推進を阻む課題の2つ目は「ワークライフバランスの環境が整っていない」ことが挙げられます。
小さなお子さんを園に預けていても急な発熱などで呼び出されることもしばしばあります。
こんな時、快く送り出してくれる職場環境と時間や半日単位で取得できる有給といった制度が整っていると、とても心地よく仕事ができるため、効率も上がります。
ワークライフバランスの環境を整えるだけでもかなり変わることでしょう。
③女性管理職のロールモデルがいない
女性活躍推進を阻む課題の3つ目は「女性管理職のロールモデルがいない」ことが挙げられます。
企業に女性管理職がいないと上層部に女性起用を公平に考慮する考えがない可能性があり、まずは上層部の意識改革から始めなくてはなりません。
企業に女性管理職がいないと、この企業では望む姿になれないとトライする前から諦める女性もないとはいえないため、貴重な能力を埋まらせてしまわないように現時点の段階で女性管理職のロールモデルと作ることは課題解決のひとつとなるでしょう。
女性活躍を推進する4つのメリット
女性活躍を推進するといっても、女性活躍推進を阻む課題を乗り越え、採用や育成等に⼥性社員が能⼒を⾼めつつ継続就業できる職場環境にしていくことは、企業自身にとって多大なコストと時間を要するでしょう。
女性活躍推進を阻む課題を乗り越え、採用や育成等に⼥性社員が能⼒を⾼めつつ継続就業できる職場環境にしていくと、企業にとってもメリットがあります。
女性活躍を推進する4つのメリットは次のとおりです。
②業務改善が期待できる
③助成金がある
④企業イメージを高める
メリット①優秀な人材確保ができる
女性活躍を推進するメリットの1つ目は「優秀な人材確保ができる」です。
優秀な人材の確保は2方面から行うことが必要です。
1つは優秀な人材を集めること、もう1つは優秀な人材を辞めさせないことです。
そのためには、育児や介護に対する支援や制度、ワークライフバランスの環境整備をするなど、女性にとって「働きやすい環境」を提供することが大切です。
女性が働きやすく、やりがいのある職場環境にすることは、同時に男性にとってもよい環境づくりになり、企業にとって優秀な人材を確保し、継続雇用できるというメリットになります。
メリット②業務改善が期待できる
女性活躍を推進するメリットの2つ目は「業務改善が期待できる」です。
業務改善は女性ならではの視点で見てもらうことから始まります。
女性を管理職に起用することで、男性の視点では気が付かない問題点や課題に対する解決策が期待できます。
男性だけの管理職が考える業務改善よりも女性を交えて視点を広げることで、業務の標準化が進み、男女問わず任せることができるようになるため、業務改善や作業時間の効率化に繋がり、企業にとってムダな残業が減らせるというメリットになります。
メリット③助成金がある
女性活躍を推進するメリットの3つ目は「助成金がある」です。
両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)という助成金があります。
女性活躍推進法に沿って、女性社員の活躍に関する課題解決に相応しい数値目標とその達成に向けた取組目標を盛り込んだ一般事業主行動計画の策定・公表等を行います。
そのうえで、行動計画に盛り込んだ取組内容を実施し、3年以内に数値目標を達成した事業主に最大60万円に助成金が支給されます。
女性活躍推進を行うにあたって環境整備や制度の見直しなどに費用が掛かりますから助成金でサポートしてもらえるのは企業にとって費用負担の軽減というメリットになります。
メリット④企業イメージを高める
女性活躍を推進するメリットの4つ目は「企業イメージを高める」です。
対外的に女性活躍推進をしている企業であるとわかるようにすることで、企業イメージを高めることが期待できます。
行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍に関する取組の実施状況が優良な企業については、申請により、厚生労働大臣から優良企業の認定(「えるぼし」認定)を受けることができます。
優良企業の認定(「えるぼし」認定)を受ければ、採用の時などに企業イメージアップにつながりますので、企業にとって優秀な人材を雇用できるメリットにつながります。
女性活躍を推進するための取り組み
女性活躍を推進することによりメリットを得るためにはどのようなことが必要でしょうか?
女性活躍推進法に基づき、国・地方公共団体、常時雇用する労働者の数(※)301人以上の大企業などに対して次の4つの取り組みをすすめています。
(※) 正社員だけでなくパート、契約社員、アルバイトなどの名称にかかわらず、以下の要件に該当する労働者も含みます。 ① 期間の定めなく雇用されている者 ② 一定の期間を定めて雇用されている者であって、過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者又は雇⼊れの時から1年以上引き続き雇用されると⾒込まれる者
常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主
常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主は、女性活躍推進法に基づいて、次の4つの取り組みが義務付けられています。
②1つ以上の数値目標を定めた⾏動計画の策定、社内周知、公表
③⾏動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出
④⼥性の活躍に関する1項目以上の情報公表
しかし、2019年(令和元年)6⽉5日に公布された改正女性活躍推進法では、301人以上の大企業に対して2つの改正点が盛り込まれました。(2020年4⽉1⽇施行)
① ⼥性労働者に対する職業⽣活に関する機会の提供
② 職業⽣活と家庭⽣活との両⽴に資する雇用環境の整備
それぞれの区分ごとに1項目以上(計2項目以上)を選択し、それぞれ関連する数値目標を定めた⾏動計画を策定すること
① ⼥性労働者に対する職業⽣活に関する機会の提供
② 職業⽣活と家庭⽣活との両⽴に資する雇用環境の整備
それぞれの区分から、それぞれ1項目以上を選択して、2項目以上情報公表すること
常時雇用する労働者の数が101人以上300人以下の事業主
常時雇用する労働者の数が101人以上300人以下の事業主は、一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する取り組みに対して努力義務にとどまっています。
②1つ以上の数値目標を定めた⾏動計画の策定、社内周知、公表
③⾏動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出
④⼥性の活躍に関する1項目以上の情報公表
令和4年4月1日施行ですが、一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大されることになります。
すなわち、労働者が101人以上いる企業は全て義務の対象になるということです(労働者100人以下の中小企業は努力義務です)。
女性活躍の課題分析、課題に対する取組例
厚生労働省の「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」というパンフレット(PDF)では、課題分析の方法例、その課題に対する取組例について記載されておりますので、一部ご紹介いたします。
ここまで女性活躍を推進することの課題やメリットなどをお伝えしました。
では何から取り組んでいけばよいのでしょうか?
女性活躍の課題分析、課題に対する取組例を知っておくと参考になるのでよいでしょう。
厚生労働省の「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」というパンフレット(PDF)では、課題分析の方法例、その課題に対する取組例について記載されておりますので、一部ご紹介いたします。
事業主の実情に応じて、自社の課題分析、取組内容の参考としてご覧ください。
【課題分析における判断の目安例(採用関係)】
① 全体に占める⼥性の割合が4割を下回っている場合
② 男⼥別の採用における競争倍率については、(⼥性の競争倍率×0.8)≧(男性の競争倍率)である場合
→ 男⼥間の格差が大きいと判断、選択項目等によるさらなる課題分析の必要性が⾼い
【課題分析の視点例、取組例】
課題分析の視点例 | 取組例 |
採用した労働者に占める⼥性労働者の割合が低い雇用管理区分がないか(特に総合職等の基幹的職種)。 | 採用選考基準や、その運用の⾒直し |
「採用した労働者に占める⼥性労働者の割合」が低い場合、応募者の男⼥⽐率と⽐べ、採用段階で⼥性を絞り込んでいないか(「男⼥別の採用における競争倍率」が⼥性の方が⾼くなっていないか)。 | ⾯接官への⼥性の参画による採用選考における(無意識の)性別のバイアスの排除 |
「男⼥別の採用における競争倍率」が男⼥同等であるのに、採用した労働者に占める⼥性労働者の割合が低い場合、募集方法に課題はないか。 | ⼥性が活躍できる職場であることについての求職者に向けた積極的広報(特に技術系の採用における理系⼥子学⽣に対する重点的広報/各種認定や表彰の取得による⼥ 性が活躍できる職場であることのアピール等) |
過去の採用結果の蓄積等により、労働者に占める⼥性労働者の割合が低くなっている雇用管理区分がないか(特に総合職等の基幹的職種)。 | 採用時の雇用管理区分にとらわれない活躍に向けたコース別雇用管理の⾒直し(コース区分の廃止・再編等) |
より基幹的な職種(総合職等)において⼥性⽐率が低く、より補助的な職種(一般職・パート等)において⼥性⽐率が⾼くなっていないか。 |
一般職等の職務範囲の拡大・昇進の上限の⾒直し・処遇改善 |
まとめ
「⼥性活躍推進法」とは、⼥性の個性と能⼒が⼗分に発揮できる社会を実現するため、国、地方公共団体、⺠間事業主(一般事業主)の各主体の⼥性の活躍推進に関する責務等を定めた「⼥性の職業⽣活における活躍の推進に関する法律」のことを言います。
女性活躍を推進することは、⼈材の確保・定着や社員のモチベーションの向上など、多岐にわたり企業にとって大きなメリットがあると言われていますが、なかなか前に進めない事情があるのかもしれません。
今後、企業自身にとっても、採用や育成等に多大なコストを投じた⼥性社員が能⼒を⾼めつつ継続就業できる職場環境にしていくことは、重大な課題となるでしょう。
女性活躍推進を阻む3つの課題と女性活躍を推進する4つのメリットを紹介します。
②ワークライフバランスの環境が整っていない
③女性管理職のロールモデルがいない
②業務改善が期待できる
③助成金がある
④企業イメージを高める
女性活躍を推進することの課題やメリットなどを知ったうえで、何から取り組んでいけばよいのでしょうか?
女性活躍厚生労働省の「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」というパンフレット(PDF)では、課題分析の方法例、その課題に対する取組例について記載されておりますので参考にしましょう。
企業にとって、採用や育成等に多大なコストを投じた⼥性社員が能⼒を⾼めつつ継続就業できる職場環境にしていくことは、とても大変なことです。
あらゆる課題を乗り越え、女性活躍を推進することは、企業にとって大きな財産を生み出すことになるため、できることから1つ1つ取り組みましょう。