子育てと仕事を無理なく両立するために 活用したい育児支援制度とサポートサービス

ワークライフバランス

育児と仕事の両立は、多くの働く母親にとって大きな課題です。特に子どもが小さい時期は、仕事と育児、家事のバランスを取ることは簡単ではなく、ワーク・ライフ・バランスの見直しや工夫が求められます。公的な育児サポートといえる育児・介護休業法の知識を得て、育児や家事のサポートサービスを活用することは、無理なく仕事を続けるための一助となるかもしれません。少し余裕をもった働き方ができるよう、ワーク・ライフ・バランスも見直してみましょう。

目次

    育児・介護休業法について把握しておこう

    子育てをしながら働くうえで、その両立に対して企業側の対応や規則が整っている場合にはあまり意識する必要がないかもしれませんが、そうではない場合、育児・介護休業法を把握し、自分で制度を利用するための請求をしなければいけない場面が出てくるかもしれません。法で定められた、仕事と育児を両立させるための主な制度をいくつか見てみましょう。

    1日6時間の短時間勤務制度

    POINT

    ・所定労働時間の短縮措置(短時間勤務制度) (第23条第1項)
     事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者について、労働者が希望すれば利用できる、所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための措置(短時間勤務制度)を講じなければなりません
    引用:「育児・介護休業法のあらまし」(厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)(https://www.mhlw.go.jp/content/11909000
    /000355354.pdf P107)

    短時間勤務制度は3歳に満たない子どもを育てている場合に利用可能で、勤務時間を短縮することにより保育園の送り迎えや家事、育児のために時間を確保することができます。乳幼児をもつ親にとって、仕事と家事、育児の両立はとても大変ですが、子どもにとっても、親が仕事復帰することにより慣れない環境に置かれ戸惑うことがあるかもしれません。親子で大変な時期だからこそ、短時間勤務を利用することで、親子で少しずつ新しい環境に慣れていくことができるでしょう。

    特に集団生活を始めたばかりの子どもは、しばしば風邪をひいたり、急な通院などが必要になることもあります。こうしたイレギュラーな状況にも、短時間勤務制度を利用することで、少し余裕を持って対応できる可能性が高まります。

    所定外労働の制限と時間外労働の制限

    POINT

    ・育児を行う労働者の所定外労働の制限1(第16条の8第 1 項)
      事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合においては、事業の正常な運営 を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはいけません

    ・育児を行う労働者の時間外労働の制限1 (第17条第1項)
     事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、その子を養育するために 請求した場合においては、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、1か月について24時間、1年 について150時間を超える時間外労働をさせてはいけません

    引用:「育児・介護休業法のあらまし」(厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)(https://www.mhlw.go.jp/content/11909000
    /000355354.pdf P77、82)

    所定外労働の制限は3歳未満の子どもを、時間外労働の制限は小学校就学前の子どもを養育する労働者の労働時間を制限する制度です。長時間の労働は、親子双方への負担が増え、大きなストレスもかかるでしょう。子育てなどの家庭の事情はなかなか職場で切り出せない場合もあるかもしれませんが、制度を使うなどして長時間勤務を避けることは、ときに親子の心身の健康にとって大切です。

    これらの制度は、労働者が自ら請求しなければ適用されないため、必要だと感じた場合には企業へ相談、申請をおこないましょう。特に、育児休暇明けから所定外労働の制限を希望する場合には、早い段階で企業に相談することで、スムーズな対応を期待できます。

    子の看護休暇

    POINT

    ・子の看護休暇制度 (第16条の2、第16条の3)
     小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度において5日 (その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合にあっては、10日) を 限度として、子の看護休暇を取得することができます

    引用:「育児・介護休業法のあらまし」(厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)(https://www.mhlw.go.jp/content/11909000
    /000355354.pdf P71)

    子の看護休暇は年次有給休暇とは別に、小学校就学前までの子どもがケガや病気になった際に、親が看護をおこなうための休暇を取得できる制度です。年次有給休暇だけで対応ができる場合もあるかもしれませんが、特に集団生活を始めたばかりの時期の子どもは頻繁に病気にかかることがあるため、年次有給休暇だけでは不足することも考えられます。

    企業によっては子の看護休暇を有給で取得できる場合もあるので、事前に職場に確認をしておくとよいでしょう。無給の場合であっても、欠勤とした場合には査定や昇給に影響が出ることがありますが、事業主が労働者に対し子の看護休暇制度を利用することで、不利益になる扱いをすることは法律で禁止されています。そのため、今後のキャリアを考えても、この制度を利用することには大いに意義があります。

    法改正により今後の子育て世代のための制度はさらに手厚く

    出典:「育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法改正ポイントのご案内」(厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf)

    2025年(令和7年)から施行予定の育児・介護休業法では、育てる子どもが3歳までとされていた「所定外労働の制限(残業免除)」が、小学校就学前の子を養育する労働者も請求可能になります。また、3歳未満の子どもを養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講じる努力義務が事業主に課せられるようにもなります。

    子の看護休暇は、「子の看護等休暇」と名称が変わり、対象となる子どもの範囲が小学校3年生修了までに拡大され、取得事由に入園(入学)式、卒園式が追加されます。このように、子育て世代のための制度はさらに手厚くなる予定です。

    新たな制度のおかげで、短時間勤務制度や残業の免除が適用される期間が終了した後や、子どもが小学校へ入学した後も、仕事と子育て両立の負担がこれまでより軽減されることが期待されます。

    仕事と育児の両立のために利用できる育児サポート

    仕事をしながら育児をしていると、育児・介護休業法の制度だけではサポートが不十分な場合もあるでしょう。制度があるとはいえ、どうしても外せない仕事がある場合もあるでしょうし、子どもが頻繁に体調を崩し、思っていたよりケアが必要となることもあるかもしれません。

    家族だけでは手が回らなくなった育児や家事に、サービスの利用を検討することで、少しでも余裕をもって仕事や子育てに臨むことができるかもしれません。

    ファミリー・サポート・センターやベビーシッターを利用する

    ファミリー・サポート・センターベビーシッターは、子どもの預かりや送り迎えなどに対応してくれるサービスです。就労時間が送り迎えの時間帯に合わない場合や、保育園や学校の時間外に預けたい時に利用できます。

    ファミリー・サポート・センターは地方自治体が運営しており、地域で子育てを支援し合うシステムです。援助を受けたい人と、講習を受けた援助をおこないたい人の相互援助のサービスで、利用するには事前に会員登録が必要です。利用料は自治体や時間帯などにより異なりますが、比較的安価に子どもを預けられるため、経済的な負担が少なく利用できるでしょう。

    ベビーシッターも子どもを預けるサービスですが、依頼する業者や個人によって価格や対応可能なサービスが異なります。保育士や看護師などの有資格者が対応する場合や、保育だけでなくリトミックや体操、ピアノなどの習い事にも対応してくれる場合もあります。自治体によってはベビーシッターの利用支援があるため、利用前に一度確認しておくとよいでしょう。

    病児や病後を預かってくれる病児保育サービス

    病児保育サービスは、保育施設や医療機関などで提供される、病気や病後の子どもを預かってくれるサービスです。施設によって料金や食事提供の有無が異なりますが、1日2,000円~3,000円程度で利用できます。利用には事前登録が必要な場合もあるため、事前にホームページを確認したり、電話で確認することでスムーズに利用を開始できます。

    通常の保育園では、子どもが熱を出したり嘔吐したりすると、保護者に連絡が入り、お迎えに行く必要がありますが、病児保育ではこうした症状にも専門のスタッフが対応してくれるので安心して預けることができます。また、24時間熱が上がらないことが確認できるまで、病後のケアをしてくれる施設もあり、働きながら育児をする親にとって心強い味方となるでしょう。

    家事代行サービスで負担軽減

    日本での家事代行サービスの利用率は、ヨーロッパなど海外と比べて低い水準にあるようですが、共働き家庭の増加に伴い、需要は高まっています。特に子どもがいると家事に育児の負担がさらに増えるため、家事代行サービスの利用を検討してみるのもいいかもしれません。

    「家事は家庭内でおこなうもの」という考えを持つ人も多く、家事を外注することに抵抗を感じるかもしれませんが、毎日ではなくても、月に一度利用するなど、普段頑張っている自分へのご褒美として取り入れてみるのもいいかもしれませんね。

    育児期間を活かした柔軟なキャリアプランニング

    育児・介護休業法の制度や育児サポートのサービスを利用して働き続けることで、子どもの成長に伴い、少しずつ仕事と育児の両立がしやすくなるかもしれません。しかし、現在の生活を続けることを困難と感じたり、理想としていた生活と大きく違うと感じる場合には、タイムマネジメントをとりいれたり仕事と育児の両立が可能な職場への転職、一時的に仕事から離れてワーク・ライフ・バランスを見直す機会とするのも一つの選択肢でしょう。

    効果的なタイムマネジメント

    仕事と家事の効率化を図る場合には、タイムマネジメントをとりいれてみましょう。タイムマネジメントは限られた時間を最大限に活用するためのスキルのことで、仕事や家庭でのやるべきこと、日々のタスクをできるだけ細分化し、優先順位を明確にすることで、タスクを効率よくこなしていく方法です。

    細分化されたタスクを元に、「Googleカレンダー」などのカレンダーアプリを使って、タイムマネジメントをすることで、仕事や子育て、家事などメリハリをつけられます。また、一日の終わり、週の終わりに、タスクの状況を振り返ることで、さらに効率化できる可能性が高まります。タスクが多すぎる場合には、解決策について家族と相談することも必要となるでしょう。

    育児と両立しやすい職場への転職

    サポート体制が整っていない企業や、急な休みに対応できない職種で働いている場合には、転職を検討してみるのもよいかもしれません。短時間勤務やリモートワークを導入している企業であれば、家庭の事情に合わせた働き方がしやすく、通勤時間の節約や急な子どもの病気にも対応できる可能性が高まります。

    ある一定以上の規模の企業であれば、女性の活躍に関する情報育児休業等の取得の状況の公表が義務付けられており、社内での女性の働き方の実情がある程度把握できるかもしれません。そうした情報が公表されていない企業の場合は、採用ページや企業の公式サイト、口コミサイトなどを確認すること、ときには直接問い合わせてよく確認することも重要です。上司や同僚の理解や制度の運用状況については、面接や会社説明会で直接確認をすることで、入社前後の認識のギャップを減らすこともできるでしょう。

    育児期間を将来を見据えたキャリアの見直しにあてる

    ここまで、仕事と育児を両立するための制度やサービス、そして対応策としてのタイムマネジメントや転職について紹介しましたが、子どもが小さいうちは、余裕をもった働き方を選び、これまでやこれからのキャリアを見直す時間にあてるという方法もあります。仕事に忙しい日々の中では、子どもとの時間やスキルアップのための学習時間、今後のライフプランを考える時間を確保するのは難しいかもしれません。だからこそ、この時期をこれからの生き方や働き方を考えるための良い機会と捉えてみてください。

    特に、今後の需要も高い、単価の高い仕事につながるスキルを取得したり、自分をアピールするためのマーケティング能力を身につけることで、子どもが成長し、手がかからなくなる頃には、長期的なキャリアを築くためのチャンスが広がります。この時間を有意義に活用し、より充実した未来を目指していきましょう。

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