ワーク・ライフ・バランス実現のカギは「休み」の過ごし方にあり 休日を充実させるための7つの提案

ワークライフバランス

ワーク・ライフ・バランスの実現とは、仕事もプライベートも充実し、両方の調和がとれた生活を送ること。毎日仕事に集中しすぎたり、家庭を優先してやりたい仕事ができなかったり、どちらかに比重がかたよっていると、心身にストレスを抱えることになります。仕事を休むのが苦手といわれる日本人の課題は「きちんと休む」こと。この記事では「休日」「休暇」の視点から、「休みを充実させる」というテーマでワーク・ライフ・バランスの見直しをしてみましょう。

目次

    みんなは休日をどのようにとらえ、どのように過ごしている?

    理想の休日は週休3日?

    日本人は良く言えば「勤勉」で、休みをとらない・休まない傾向があります。長期休暇を取る人がとくに少ない日本社会に対し、海外では「バケーション」や「ホリデー・シーズン」でまとまった休みをとる習慣があります。

    しかし、「休まない」とはいっても、多くの人は「休みたくない」と思っているわけではないようです。2023年4月に「楽天インサイト株式会社」が行った「休暇に関する調査」では、休日数が「増えてほしい」人は、全体の67.4%という結果となっています。(「楽天インサイト」に登録しているモニターの中から、全国の20~64際の会社員と会社員管理職の男女1000人を対象に調査)

    この調査では、「現在の休日数」は「週休2日」(90.3%)、休日が「増えてほしい」と回答した人の理想の休日数は「3日」(78%)が、最も多い回答結果でした。

    休日にしたいこと・していること

    「休みの日に何をしますか? あなたにとって休日とはどのような時間ですか?」と聞かれたら、どのように答えるでしょうか。はっきり答えられる人もいれば、「何も……」と口ごもってしまう人も多いのではないでしょうか。

    休日の過ごし方を考える、計画を立てるということは、休日というプライベートな時間を充実させるひとつのポイントといえるかもしれません。

    楽天インサイト株式会社の調査結果では、「趣味の時間を増やしたい」と考えている人が多いようです。女性はとくに「体を休めたい」「気持ちをリフレッシュさせたい」という傾向が見られます。

    「休日が増えてほしい」と回答した理由(n=674:休日が「増えてほしい」と回答した人):複数回答 単位:%

    出典:楽天インサイト株式会社「休暇に関する調査」(2023年)

    休日は「自宅で過ごしたい派」が多め。この調査では、50代女性はとくにインドア派が多いようです。そして、調査結果で気になる点は、体を休めたり、気持ちをリフレッシュさせたい女性が、休日におもに家事をしていることです。

    家事が好き、家事でリフレッシュできるという女性もたくさんいますが、体を休めたいのに家事をしなければいけないなど、家事を負担に感じる女性もまた多くいるでしょう。共働き世帯が専業主婦世帯を大きく上回る現在はもう、「仕事は男性、家事は女性」という時代ではありません家族との家事の分担や効率化は、女性のワーク・ライフ・バランス向上のために、とくに必要なことといえます。

    休日の過ごし方のタイプ(n=1,000:会社員・会社員(管理職)のみ)単一回答 単位:%

    出典:楽天インサイト株式会社「休暇に関する調査」(2023年)

    休日の主な過ごし方(n=1,000:会社員・会社員(管理職)のみ)複数回答(3つまで) 単位:% 上位15位まで記載

    出典:楽天インサイト株式会社「休暇に関する調査」(2023年)

    「ゆっくり眠る×〇〇」「好きなこと×〇〇」で休日を充実させる7つの提案

    よくいわれるように、体と心は一体です。体が疲れると気持ちも落ち込み、体が休まると気持ちもリフレッシュされます。体を休めるためには、量・質ともに睡眠が大切ですが、リフレッシュのためには「好きなこと」を意識してみてはいかがでしょうか。

    ゆっくり眠る×早寝

    前掲の「休暇に関する調査」(楽天インサイト株式会社)では、「休日前夜の就寝時間」についてもアンケートをとっています。

    結果、「体を休めたい」はずの女性が、休日前夜の就寝時間は遅い傾向に。とくに20代・40代の女性は、「どちらかといえば普段より遅く寝る」「普段より遅く寝る」と答えた人が6割を超えています。

    「明日は休み」と思えば、ついテレビや動画、インターネットサイトを見すぎたり、たまっていた家事をしてしまったりで夜ふかしをしがちですが、休日を充実させるためには早寝がポイントゆっくり眠って翌日に早起きすれば、リフレッシュのための活動も、たまっていた家事もできる、長いプライベートな時間を確保できます。

    休日前夜の就寝時間(n=1,000:会社員・会社員管理職)のみ)単一回答 単位:%

    出典:楽天インサイト株式会社「休暇に関する調査」(2023年)

    ゆっくり眠る×体を動かす

    睡眠と覚醒のリズムを整える作用をもつ睡眠ホルモン「メラトニン」の原料となる脳内物質「セロトニン」は、日光を浴びることで作られます。セロトニンには脳の興奮を抑え、心身をリラックスさせる効果があり「幸せホルモン」と呼ばれることも。

    セロトニンの分泌を促すのにはウォーキングも効果的。休日の朝、もしくは休前日の通勤時などに、朝日を浴びながら15~30分ほど歩く、という習慣がおすすめです。

    体をあたためる入浴もゆっくり眠るのに効果的ですが、お風呂のなかでの軽い体操やストレッチも健康・筋力維持やリラックス効果で注目されています。ただ、入浴は体力をつかうので、適度に行いましょうね。

    好きなこと×ショッピング

    ぐっすり眠ったら、好きなモノを見つけに出かけてみましょう。ファッション、コスメ、インテリア雑貨。好きなものをゲットして身につけたり、飾ったりすれば、心が満たされて気持ちを前向きにリフレッシュできますよね。ウインドウショッピングは、仕事へのモチベーションをあげてくれます。

    毎日使うマグカップ、タオルやハンカチ、洗剤やシャンプーなどの買い替えも、少しこだわってみましょう。いつもと色柄のテイストを変える、肌ざわりがよりよいものを取り入れる、香りを変える……。日々の暮らしに少しだけでも「変化」をつけられれば、リフレッシュ効果は大きいものです。

    好きなこと×食べもの

    休日に平日よりもゆっくりもてる時間があるとすれば、お茶の時間。非現実を楽しむカフェや喫茶店で過ごすのもよし、自宅でお気に入りのうつわを使うのもよし。手軽に気分転換ができますよ。甘いものを食べると、幸せホルモンのセロトニンも分泌されます。

    食べたいものを自分で作ってみる、気になっているお店でテイクアウト、行きたかったお店に外食に出かける、のんびりお酒を楽しむなど「休日ならではの食」の習慣を、自分なりに設定して楽しむのもおすすめです。

    好きなこと×見る、推す

    ひとりで、ひとつのことに没頭できる映画鑑賞や読書の時間は、マルチタスクから解放されて脳が休まる時間。そもそも人間の脳は2つのタスクの処理くらいが限界といいます。でも、情報にあふれ、仕事に家事に忙しい日々、わたしたちの脳ははるかに多くのタスクを課せられて疲弊しています。

    脳が疲れると、判断力が下がってミスが増えたり、イライラの原因にも。脳を休めることで実力も発揮できるし、ご機嫌に過ごす活力が養えます。

    目新しい景色、美しい景色を見て、良い刺激を受けるのもリフレッシュ効果があります。普段はあまり歩かない道を散歩する、電車に揺られて少しだけ遠出する、遊歩道や庭園を歩くなどは、半日もあれば十分可能なアクティビティ。残りの半日を自宅でゆっくり休めば、休みは自宅で過ごしたい派の人でも楽しめますね。

    夢中で「推し」を応援する「推し活」も、ライブやイベントに出かけたりグッズを購入したり、リフレッシュ効果のある活動といえます。

    好きなこと×おしゃべり

    家族や友人との気兼ねのない雑談、おしゃべりには、絶大なるリラックス効果がありますよね。ですが、2019年からのコロナ禍を通して、仕事上でもプライベートでも会食の機会が激減し、それがずっと後を引いた状態の人も多いのでは。ワーク・ライフ・バランスを向上させるのが目的のテレワークの導入も、同僚や取引先などとのコミュニケーション不足を招く側面もあることが浮き彫りになりました。

    楽しくおしゃべりすることで脳は活性化され、そのパフォーマンスが向上します。仕事でもプライベートでも、ウェブ会議ツールを活用して、お互いの映像を見ながら話したり、久しぶりの再会を休日の予定にしてみてはいかがでしょうか。だるいな、しんどいな、と思う日も、出かけて誰かと楽しい時間を過ごすことで、すっきり心も体も軽くなることもあります。

    好きなこと×家事

    プライベートを充実させるには、家での食事の習慣、生活環境を整えることなども重要です。

    家事をすることが好きであれば、休日の料理や掃除でストレス解消、リフレッシュできますね。お気に入りのキッチンツールや掃除道具をそろえるなどすれば、より休日の家事の楽しみが広がるかも。

    家事をすることが苦手であれば、家事の工夫をするのも一手です。たとえば休日中に、平日の献立を決めておく、道具類や書類、洋服類などを休日ごとに場所を決めて(洗面所、リビングボード、キッチンなど)少しずつ整理整頓して収納するなど。そうすれば、忙しい夕飯前に献立を考えながら買い物しなくてすみますし、モノを探す手間を省ければ、ストレスを感じなくて済みます。

    家事を細分化してシングルタスクにする、逆にマルチタスクにして「~しながら」やってしまう、毎日●分や休日に●分などルーティンとして行う、など自分に合う家事の工夫を見つけれるといいですね。家事のすべてをひとりで引き受けている場合は、家族へ家事を上手に割り振ることも大事です。

    海外の家事の仕方は、わたしたちから見ると目からウロコの場合もあり、参考になるものもあります。たとえば、日本では一日に数回洗濯機を回すことはよく聞く話ですが、アメリカでは週に1~数回の洗濯がふつうだとか。イギリスでは、朝食や昼食は毎日同じ手軽なメニュー、夕飯は半調理されたおかずを利用するなどして、家事に日本人ほど時間を割かないといいます。日本人が考える「完璧な家事」を手放すことも、休日を充実させるためには大切かもしれません

    きちんと休めていますか? 法定休暇について知る

    ここまでは「休日」、つまり「労働の義務のない日」について見てきました。ここからは「休暇・休業」について知っておきたい基礎知識を紹介します。

    「休暇・休業」とは、「労働義務のある日だが、労働が免除される日」を指します。企業に雇用されている場合、自分の意思や都合により、「休暇・休業」を勤める企業に請求して取得できます。

    「休暇・休業」には、労働基準法、育児・介護休業法により定められた「法定休暇」と「法定休業」のほか、企業などが独自に定めた「法定外休暇」があります。「法定外休暇」は福利厚生の一環として就業規則などで決められた慶弔休暇、夏季休暇やリフレッシュ休暇などのことです。法定休暇と法定外休暇については就業規則に必ず記載されています

    POINT

    法定休暇・法定休業の種類、取得するために満たすべき要件など、自分が請求・取得できる休暇を知っておくようにしましょう。また、企業や会社によっては、法定のもの以上に手厚い休暇が取得できる場合もあります。就業規則などで確認しておくとよいでしょう。※()内は休暇を定めた法律

    法定休暇

    • 年次有給休暇(労働基準法39条)
    • 産前産後休業(労働基準法65条)
    • 生理休暇(労働基準法68条)
    • 介護休暇(育児・介護休業法16条の5)

    法定休業

    • 育児休業(育児・介護休業法5条)
    • 子の看護休暇(育児・介護休業法16条の2)
    • 介護休業(育児・介護休業法11条

    年次有給休暇

    年次有給休暇とは、一定期間勤続すれば取得できる休暇のことで、「有給」で休むことができ、取得しても賃金が減額されない休暇のことです。取得できる条件は、①雇い入れの日から6か月経過していて、②その期間の全労働日の8割以上出勤していることで、これを満たせば10日の年次有給休暇が付与されます。

    また、最初に年次有給休暇が付与された日から1年を経過した日に、②と同様要件(1年間に全労働日の8割以上出勤)を満たせば、11日の年次有給休暇が付与されます。このように、勤続期間によって付与される年次有給休暇は増えていき、雇い入れから勤続期間が6年6か月以上となると、付与される年次有給休暇は20日(翌年まで繰り越し可能、時効2年)となります。

    2019年、労働基準法が改正され、全ての企業に、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち 年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。

    この改正が行われた原因は、同僚への気兼ねや年次有給休暇を請求することへのためらいなどの理由により、年次有給休暇の取得率が低調であったことです。法改正にいたるほどに、日本人はきちんと休めていないということになりますね。2025年までに年次有給休暇の取得率を70%にすることが、政府の目標とされています。

    女性や子育て・介護のための法定休暇

    年次有給休暇以外でも「法定休暇」は、請求・申請すれば取得することができ、企業などはそれを認める法的義務があります。ただし、「有給」か「無給」かについては法的な定めはなく、企業や会社ごとに決められています。

    産前・産後休業

    女性労働者は、請求すれば出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から休業することができます。産後は、出産の翌日から8週間は就業することができません。ただし、産後6週間を経過後に、本人が請求し、医師が認めた場合は就業できます。

    生理休暇

    生理日の就業が著しく困難なときは「生理休暇」を請求できます。休暇の日数については、生理期間や痛み、症状は個人によって異なるため、就業規則その他によりその日数を限定することはできません。

    子の看病休暇

    小学校就学前の子どもを養育する男女労働者は、1年につき子が1人なら5日まで、子が2人以上なら10日まで、病気やけがをした子の看護、予防接種及び健康診断のために休暇を取得することができます。1日単位又は時間単位で取得することが可能です。

    介護休業

    要介護状態の対象家族1人につき、要介護状態に至るごとに1回、 通算して 93 日まで介護のために仕事を休むことができます。

    『働く女性の心とからだの応援サイト』(厚生労働省)では、女性の健康問題に関する知識や、健康を維持しながら働くための制度などがくわしく紹介されています。また、同サイト内の「妊娠出産・母性健康管理サポート」では、産休・育休をいつから取得できるのか、出産予定日を入力することで自動計算できたり、「妊産婦のための保健指導又は健康診査」を受診するための必要な時間が女性労働者に確保されていることなどの情報も掲載されていますので、参考にしてみましょう。

    フリーランスの休日・休暇は?

    フリーランスで働く人の休日や休暇は、労働基準法などの労働法規によって保護されていません。働く本人の裁量によって、休みや休息を取る必要があります。

    このことから、フリーランスの休みについては、ライフスタイルに合わせた休みが取れる、仕事の依頼に対して柔軟に対応できるなどといったメリットと、発注元の依頼に柔軟に対応するために休みなく仕事をこなしていかなければいけない事態が生じかねないというデメリットがあります。

    個人で活動する特定受託事業者(フリーランス)を保護する法律は、2023年に公布された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」です。

    この法律では、特定受託事業者(従業員や役員のいる組織)に対し、期日における報酬支払、募集情報の的確表示、ハラスメント対策の義務を課すとともに、特定受託事業者(フリーランス)への依頼が継続的である場合、「特定受託事業者からの申出に応じて、当該特定受託事業者(当該特定受託事業者が第 二条第一項第二号に掲げる法人である場合にあっては、その代表者)が育児介護等と両立しつつ当該業務委託に係る業務に従事することができるよう、その者の育児介護等の状況 に応じた必要な配慮をするよう努めなければならない」など、育児や介護などへの配慮を義務付けています

    「休む」という強い意思をもつ

    2022年の1年間に、企業から付与された年次有給休暇日数(繰り越し日数を除く)は、労働者1人平均17.6日で、このうち、労働者が取得した日数は10.9日。取得率は62.1%(前年は58.3%)で、1984年以降過去最高だったといいます。(厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」)2019年、年5日の年次有給休暇の確実な取得のために、労働基準法が改正されたことは、「過去最高」の取得率となった一因でしょう。

    年次有給休暇とは、「一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇」です。逆に言えば、この休暇を取得できなければ、心身の疲れは癒されない、ということになります。

    勤務する職場で休みにくい雰囲気を感じたとしても、「自分の健康のため」と強い意思をもって休暇を取得することで、ワーク・ライフ・バランスの向上につなげられれば、仕事のパフォーマンスも上がり、結果的に職場に良い影響をもたらすかもしれません。

    フリーランスで働く人も、フリーランスという働き方を保護する法律や制度の知識をつけておくこと、休みを確保するという意識を常にもっておくことで、ライフスタイルに合わせて働くというフリーランスのメリットを享受できるといえます。

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