資格を活かしてシングルマザーが柔軟に働く方法 スキル・資格取得のための支援制度も紹介
シングルマザーとして子育てをしていると、仕事と子どもとの時間とどちらを優先するか、選択を迫られる場合も多くあるでしょう。シングルマザーが場所や時間にとらわれず、柔軟に働くうえで役に立つ資格や、新たにスキルや資格を取得するための支援制度など、充実した子育てをしながら経済的に安定した生活を送りたいというシングルマザーのための情報をご紹介します。
目次
シングルマザーが「役立っている」と感じている資格
出典:「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」(こども家庭庁)
(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref
_resources/f1dc19f2-79dc-49bf-a774-21607026a21d/9ff012a5/
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参照 2024-09-03)を加工して作成
厚生労働省がおこなった「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、この調査で「資格がある」と回答した約14万6千人のシングルマザーのうち、福祉・医療に関する以下の資格について、「役立っている」と回答した割合が高くなっています。※()内が「資格あり」と回答した人のうち、「資格が役立っている」と回答した人の割合
- 理学療法士(100%)
- 看護師 (96%)
- 准看護師(96.9%)
- 介護福祉士(87.3%)
- 保育士(73.1%)
福祉や医療分野で働くためには、専門的な知識や資格が要求されます。これらの職場は慢性的な人手不足ということもあり、時短勤務やパートタイムであっても、資格を取得していれば仕事に就きやすく、収入も安定しているとされています。
また、職場によっては、正規雇用の就労条件がシフト制で勤務時間の調整が可能であるなど、子どもの学校行事や、急な病気などにも柔軟に対応できる場合があります。
理学療法士としてのキャリアを考える
病気やケガで運動機能が低下した患者に対し、リハビリテーションをおこなう理学療法士は、前出の厚生労働省の調査で、資格が「役に立っている」との回答が100%となっています。資格を取得していれば、病院やクリニック、リハビリテーション施設や訪問リハビリなど、資格を利用した幅広い就職先が想定されます。
また、高齢化社会で今後も需要が増えていくことが予想でき、収入も雇用機会も安定している職種といえるでしょう。定時勤務の職場が多く、フルタイムやパートタイムでの就労機会も豊富で柔軟な働き方が可能なため、子育てとの両立もしやすい職種といえます。
介護福祉士の魅力と資格の活かし方
高齢者や障がい者の生活支援をおこなう介護福祉士も、前出の調査で87.3%の人が「役に立っている」と回答している資格です。特別養護老人ホームや介護老人保健施設、デイサービスなどで活躍できます。
高齢化が進む日本社会では、介護福祉士の需要は今後も高まっていくため、安定した収入と就職先を望める仕事といえます。特に、24時間体制の介護が必要な入所型の施設では、一般的にシフト勤務となるため、日勤のみでの雇用をしてもらうことができれば、子育てとの両立も可能となるでしょう。
保育士としての働き方のメリット
保育士は子どもたちの日常生活のサポート、遊びや学びのプログラムの提供、保護者との連絡調整などをおこないます。前出の調査では73.1%の人が「役に立っている」資格だと回答しています。
現在は、保育士が不足しているため、需要が高く雇用も安定している職種といえます。また、一般的に夜勤や不規則な勤務が少ないため、子どもとの時間も確保しやすい職業です。勤務先の保育施設に子どもを預けることができる場合もあり、このような場合、送迎の手間が省けたり、子どもの様子を常に把握できるという利点もありますね。
シングルマザーの柔軟な働き方につながる資格とスキル
厚生労働省のおこなった「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」では、就業しているシングルマザーのうち、「正規の職員・従業員」として雇用されている職業は、理学療法士や看護師、プログラマーを含む「専門的・技術的職業」が33.6%。次いで「事務」が30.6%と多く、シングルマザーが安定して働き続けることのできる職場が多いことがうかがえます。
これらの職業で役立つ、資格とスキルは以下の通りです。
- 簿記3級
- SAP
- RPA
「専門的・技術的職業」につながる需要の高い、専門的な資格を持っていれば、安定した収入や雇用を見込める正規雇用で、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を取り入れながら、長く働き続けられる職場も多くあるでしょう。特にIT関係の仕事は高収入、高時給の職種が多く需要も高いため、ITスキルに興味があればスキルや資格取得を目指してみるのもよいでしょう。
「事務」の仕事は他の職種と比べて、特別な資格が求められる事が少なく、企業によっては残業や休日出勤も比較的少ないため、新規採用は応募者が多く、競争率の高い職種となっています。事務員を目指すのであれば、必須資格として要求されることの多い簿記検定の取得や、今後の需要の見込まれる、業務の効率化に役立つIT系スキルの取得を検討してみましょう。
簿記3級で経理スキルを身につける
厚生労働省の前出の調査では、簿記の資格が「役に立っている」との回答は49.9%と、半数くらいの数値になっています。とはいうものの、競争倍率の高い「事務」では必須の資格となっていることが多く、事務職を希望するのであれば取得しておいたほうがいい資格といえるでしょう。
また、フリーランスとして働く場合にも、簿記3級を取得していれば、確定申告など、経理事務を自分でしなければいけないときにも役立ちます。
SAPを学んでIT業界にチャレンジ
SAP(エス・エー・ピー)は、企業の経営資源を総合的に管理するERP(統合基幹業務システム)のことです。2004年にリリースされたSAP ECC 6.0のサポートと保守サービスが2027年に終了する予定であるため、エンジニアのような高度なITスキルが求められる職種だけでなく、テスターや運用・保守サポートなど、これから新しく学んでも取り組みやすい職種の需要も高まっています。
また、SAPを理解するためには、ITの基礎知識から、企業のビジネスプロセスまで幅広い業種の知識が必要となるため、SAPを学ぶことで、幅広い分野の知識を得ることもできるでしょう。
RPAスキルで事務作業を効率化
DX(デジタル・トランスフォーメーション)化が進んでいる昨今、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用する職場も増えています。RPAを活用し、定型的な作業をソフトウエアのロボットによって自動化することによって、事務作業を効率化することができます。
RPAはプログラミングと比較すると、短期間でスキル習得をできるため、キャリアチェンジや再就職を考えている方にもおすすめのスキルとなっています。
資格取得を支援する制度を活用しよう
既に取得している資格や経験のある職種であれば、そのまま長く働き続けられる可能性や、再就職の可能性が高いでしょう。一方、新たに資格を取得したいときや、取得している資格が自分に合っていない場合には、シングルマザーが新たにスキルや資格を取得するための費用を支援をしてくれる制度の活用を検討してみましょう。
自立支援教育訓練給付金の利用方法
自立支援教育訓練給付金は、ひとり親家庭の親がスキルや資格の取得のために受講した講座の受講料が、受講修了後に一部助成される制度です。給付金を受け取るためには、受講した講座が適職に就くために必要であると認められた、厚生労働大臣指定の教育訓練講座である必要があります。
この制度を利用することで、受講の経済的な負担を軽減しながら、新たな一歩を踏み出すためのスキルや資格を取得することが可能となります。スキルや資格を取得することで、子育てがひと段落した後でも、キャリアアップが見込まれる職種に就ける可能性が高まるでしょう。申請手続きや利用条件についての詳しい内容は、お住まいの自治体にご相談ください。
高等職業訓練促進給付金で学び直す
高等職業訓練促進給付金は、ひとり親家庭の親がスキルや資格を取得する際に、6か月以上養成機関に就業する場合に訓練期間中に生活費として一定額が支給される制度です。支援を受けることで訓練中の経済的な不安を軽減し、学びに集中できる環境を整えることができます。
前出の厚生労働省による「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」で「役に立っている」と回答があった、理学療法士や看護師・准看護師、介護福祉士や保育士などの資格取得も含まれており、IT分野などでの民間資格などの取得も、支給の対象となる場合があります。高等職業訓練促進給付金についても、詳しくはお住まいの自治体にご相談ください。
ひとり親家庭の自立支援のための相談先
今後の仕事や子どものこと、生活のことなどを考えると、やるべきことが多すぎて、自分一人では身動きが取れなくなってしまうこともあるかもしれません。
実施されている自治体は限られていますが、就業相談や就業支援サービスをおこなう「母子家庭等就業・自立支援事業」や、母子家庭等就業・自立支援事業やハローワークと連携し、自立プログラムの策定をおこなってくれる「母子・父子自立支援プログラム策定事業」など、ひとり親家庭の自立を支援するために相談できる場もありますので、ひとりで抱え込まずに、困ったことがあればお住まいの自治体に一度相談してみましょう。
シングルマザーの資格取得とキャリアアップ
厚生労働省の「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」では、現在の仕事を変えたい理由(最も大きな理由)として、多くの女性が「収入が良くない」と答えています。子どもとの時間を大事にしたいからこそ、子どもとの生活に合わせて柔軟に働けるだけでなく、収入が安定した職種で働きたいと願うシングルマザーが多いようです。
すでに取得しているスキルや資格を活かした職業や、今後も長く働き続けられる、需要の高いスキルや資格の取得を検討することで、経済的な心配を減らし、豊かな暮らしを実現できる可能性が高まるでしょう。