SAPを学ぶメリットとは 世界的に需要の高いSAP ERPシステムの特徴を解説

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企業において基幹業務の一元管理を可能にするERPシステム。その中でも市場シェアが高いのが、SAP社が提供する ERPシステム(以下SAP)です。これからこのSAPについて学びたい方、または現在ERPシステムを使った業務に携わっている方に向けて、各種ERP製品についても触れながら、SAPの特徴を解説し、SAPを学ぶメリットについてお伝えします。

目次

    国内外のERP市場規模からみるSAPを学ぶ価値

    ERP(=Enterprise Resources Planning)システムとは、企業の重要な資源=「ヒト・モノ・カネ」について、あらゆる情報の一元管理を可能にするシステムです。

    ERPシステムを導入することで、企業に点在する営業・販売・物流・経理・財務などの情報を一元管理することが可能になり、業務の効率化や意思決定を迅速に行えるようになります。

    では、国内そして世界でのERPの市場規模はどれくらいあるのでしょうか?

    ERPシステムの国内での市場規模

    株式会社ITRの「ITR Market View:ERP市場2024」によると、ERP市場の2022年度の売上金額は1,687億円、前年度比11.6%増となり、2023年度も前年度の伸びを上回る同17.5%増を見込んでいるとされています。(出典:ITR Market View ERP市場2024)

    ERPの国内市場規模は、年々増大傾向にあり、今後も拡大していくことが予想されます。

    ERPシステムの世界での市場規模とSAPの市場占有率

    ERPシステムの世界での市場規模は、Apps Run The Worldが発表している「Top 10 ERP Software Vendors, Market Size and Market Forecast 2023-2028」によると、2023年の1,242 億ドルから 2028 年までに 1,482 億ドルに達し、年間複合成長率は 3.6% になると推定されています。(出典:Top 10 ERP Software Vendors, Market Size and Market Forecast 2023-2028)

    このように国内、世界で普及が進むERPシステムの市場において、SAPが占めるシェアの割合は6.2%でトップとなっています。

    出典:Top 10 ERP Software Vendors, Market Size and Market Forecast 2023-2028|Apps Run The World

    このことから、今後も国内外で需要は高まっていくと予想されるERPシステム、なかでもシェア率の高いSAPについて学ぶことは、今後価値のあるIT人材への成長につながるといえるでしょう。

    多様な業種、業務で活用されるSAPの特徴

    ERPシステムの中で、SAPは多くの企業に導入されています。ここではSAPの特徴を理解しながら、世界中の企業でどのように活用されているのかについて見ていきましょう。

    業務分野別にまとめられた機能群「モジュール」

    まず、SAPにはモジュールとよばれる業務の分野別にまとめた機能群が設定されています。

    主なモジュールには、FI(財務会計)CO(管理会計)SD(販売管理)MM(調達/在庫管理)PP(生産計画・計画)などがあり、業種によって必要なモジュールを組み合わせて導入し、データの連携をすることで業務効率化を図ることができます。

    各モジュールが連携してリアルタイムでデータを共有できることが、SAPの最大の特徴といえるでしょう。

    モジュールについては、こちらの記事でも解説しています。

    多言語・多通貨、そしてIFRS(国際財務報告基準)に対応

    SAPは多言語、多通貨、世界基準であるIFRS(※)に対応した作りをしています。また各国の会計基準や法制度、税制度にもそれぞれ対応しているため、海外に拠点のある企業にとってはメリットの多いERPシステムです。
    ※IFRS(International Financial Reporting Standards)とは、国際財務報告基準審議会(IASB)が策定した世界共通の会計基準で、これを適用することにより、グローバルに展開する企業にとっては速やかな意思決定や資金調達が可能になる。

    多業種での活用を可能にするアドオン開発やカスタマイズ機能

    機能の一部を変更することをカスタマイズといいますが、SAPではカスタマイズ機能があることから、各企業の業務都合に合わせたシステムを構築することができます。また、機能を拡張するアドオン開発もでき、各企業の業務プロセスに合わせた機能を追加することができるため、他社との差別化を図ることができるようになります。そのため業種を絞ることなく多業種で導入されています。

    導入実績が多いため信頼度が高い

    市場規模でも見たとおり、SAPの世界市場でのシェア率はトップです。これにより、SAPは世界的に高い信頼を得ているといえるでしょう。また大企業だけでなく中小企業向けの製品もあるため、最近では企業規模の大小に関わらず利用されています。

    このように、SAPは多くの企業、そして業種を絞ることなく多業種に利用されていて、その数は今後も増えていくと見込まれています。転職先の企業や勤める企業に導入されるなど、その導入数の増加により、今後もさらにSAPについて知識のある人材の需要は高まっていく可能性があります。

    各ERPシステムの特徴を解説

    これまでSAPについて解説してきましたが、ここでは他のERPシステムを紹介します。それぞれに企業にとって利用価値の高い特徴がありますが、大きく分けて以下のようなタイプに分けられます。

    オールインワンタイプの統合型

    会計・販売・人事・給与など、経営に必要なすべての業務システムをオールインワンでカバーしているタイプのERPパッケージで、企業における主要な業務を総合的に管理します。また各業務のデータを一元管理し、集計、分析などに有効活用します。

    代表的なものに、SAP S/4HANA、Oracle Fusion Cloud ERP、Microsoft Dynamics 365 Business Centralなどがあります。海外製品が多いためグローバル企業にも導入しやすいという特徴もあります。

    必要な基幹業務を組み合わせたコンポネート型

    コンポネート型のERPとは、人事や会計など必要な基幹システムだけを組み合わせたERPです。必要最低限の基幹システムを利用できるため、企業規模や予算にあわせて導入することが可能です。

    また、事業規模が拡大し新たな機能が必要になったときは、自由に基幹システムを追加できるのも特徴の一つです。

    マネーフォワードクラウドERP、ClovernetクラウドERP、kinterpなどが代表的な製品です。

    各業種に特化した業界特化型

    製造業、卸売業など特定の業種向けに作られたERPもあります。その業界に特有の商習慣がある場合、汎用的なシステムではカスタマイズに多くの手間やコストがかかるため、業界特有の商習慣やプロセスに合った機能が搭載されています。

    クラウドERP ZAC、STRAMMIC、Ross ERPなどがあります。

    ERPと一言でいっても、それぞれに特徴があり、導入する企業の規模や、業種、海外拠点の有無によって最適な製品は変わってきます。

    なかでもSAP S4/HANAは、主要な基幹システムが揃っていて、多言語、多通貨に対応しているためグローバル企業や大企業からの需要は高いといえます。

    また、ERP製品はSAP含め海外製品も多いため、製品ドキュメントなどを理解するには、主要な部分の翻訳版があるとしても、詳しく調べたいときなどにある程度の英語力が役立つといえます。より需要の高い人材になるために英語のスキルアップにもぜひ取り組んでみてください。

    SAPが実現する業務効率化例

    SAPを導入している企業では、導入後どのような業務効率化へつながっているのでしょうか。自分が携わる業種、あるいは転職を目指す先で、SAPがどのように活用されるか、そしてSAPをどのように学習していくかをイメージしながら、導入事例の一部をみてみましょう。

    ・赤城乳業株式会社
    ガリガリ君をはじめとしたアイスメーカー。冷凍倉庫の不動在庫の削減のため、生産・販売・在庫の見える化に向けて SAP ERPを導入した結果、標準原価による管理や不良在庫の削減へつながった。
    (出典:SAP 導入事例)

    ・アスクル株式会社
    紙とPDFが混在する請求書の管理に、SAPおよび他の電子帳票プラットフォームを導入することにより、忙しい決算の時期でもリモートワーク実施率を50%近くに向上させた。

    また、経理部での紙の使用料を年間10万枚削減、伝票の印刷やファイリングにかかっていた業務の時間を削減するなど、あわせて業務効率化も実現した。
    (出典:SCSK アスクル株式会社へ経理業務のデジタル化と効率化を支援)

    ・オプテック株式会社
    経営指標の可視化することが課題だったが、SAPを導入し売上推移をリアルタイムで把握できるようになったことで迅速な経営意思決定が可能になった。また業務効率化により社員の新たな時間が生まれたことで、その他の業務改善も進展している。
    (出典:日立システムズ 導入事例)

    このようにSAPを導入することは、業務の可視化、効率化の実現につながるといえます。このほか、業務の一元管理化により経営判断に必要なデータをリアルタイムで把握できるようになるなど、迅速な意思決定を可能にすることも期待できます。

    SAPの需要の高さが、SAPを学ぶメリットの大きさ

    この記事では、SAPに以下のような特徴やメリットがあることを説明しました。

    • ERP市場でSAPはトップのシェア率である
    • モジュールと呼ばれる機能群があり、それぞれのデータを連携することで業務の効率化が 図れる
    • 多言語、多通貨、そしてIFRS(国際財務報告基準)に対応している
    • アドオン開発やカスタマイズ機能がある
    • 導入実績が多いので信頼度が高い
    • オールインワンタイプの統合型ERP
    • 導入した企業はその後、業務の効率化に成功している

    こういった特徴を活かし、企業の「業務を効率化したい」、「グローバル企業の各拠点の業務を標準化したい」、「企業の特性に合わせて機能をカスタマイズしたい」、などさまざまな経営課題に応えるSAPは、今後も需要が高まることが予想されます。DXが推進される現在、これから学ぶメリットは大いにあるといえます。

    また、IT未経験者でもSAPについて学ぶことで、SAP以外のIT分野の知識も習得するきっかけになる可能性もあります。興味を持ったら学んでみる。その先に新たなキャリアが待っているかもしれません。

    でじたる女子+」では、初心者でも安心して学べるSAP講座も提供しています。この記事を読んでSAPを学んでみたい!と思われた方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

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