SAPとは世界有数のERPシステムのひとつ SAPの基礎知識と経理・財務での活用の仕方を解説
企業が効率的に業務を進行するにあたって重要な働きを担うERP(Enterprise Resource Planning)システム。ここではそのひとつ「SAP ERP」(以下SAP)についての基礎知識と、機能群である「モジュール」、なかでも中心的な経理(財務、会計)に関するモジュールについて、どのように企業で活用されているかを交えながら解説します。
目次
SAPとは世界中で導入されているERPシステム
ERP(Enterprise Resource Planning=企業資源計画)システムは、企業の重要な資源である「ヒト・モノ・カネ」についてのあらゆる情報の一元管理を可能にするシステムです。
デジタル化が加速する昨今、企業成長に欠かせないのは、スピーディで効率的な業務を行うためのデータの一元化です。こうした情報の一元管理は、企業の状況を正確かつタイムリーに把握し、素早い経営戦略の意思決定につながります。
ドイツのSAP社が製造しているERPシステムであるSAPは、企業への導入率で世界トップシェアを誇っています。SAP は、企業のあらゆる業務データを一元管理することで、業務間の認識のズレを一掃し、経営資源の最適化を促すことを目的にしており、モジュールと呼ばれる業務ごとでまとめられた機能群があります。
では、そのモジュールについて詳しく見ていきましょう。
SAPには業務の分野別にまとめられた機能群「モジュール」が20以上
SAPには、企業の中心となる業務(財務、会計、販売、生産、調達等)ごとに、それぞれに適した「モジュール」と呼ばれる機能群があります。
モジュールは20以上あり、ユーザーである企業は、自社の業務の分野や要件に合ったモジュールを組み合わせて使用します。そして、それぞれのモジュールを相互に連携させていくことで、業務の効率化、コスト削減などに活用しています。
SAPの主要なモジュールには
- 財務会計(Financial Accounting=FI)
- 管理会計(Controlling=CO)
- 販売管理(Sales and Distribution=SD)
- 調達/在庫管理(Materials Management=MM)
- 生産計画・管理(Production Planning=PP)
があります。
例えば、財務会計(FI)や管理会計(CO)などの会計や原価管理にかかわるモジュールは、業種を問わず多くの企業に導入されています。また、製造業であれば生産計画・管理(PP)がよく使われています。
一方、サービス業では製造プロセスがないため、生産管理(PP)モジュールの必要性は低く、代わりにサービス管理(Customer Service=CS)や、在庫購買管理(MM)モジュールを使用することがあります。
経理や財務領域のモジュールはSAPの中心的な機能
すべての企業において、ヒト・モノ・カネが動く以上、必ず発生する業務が会計仕訳です。カネが動くと会計仕訳が発生することはもちろん、たとえば、ヒトの採用や、ヒトの労働に対しては、採用費/現金、給与/現金といった会計仕訳が発生し、モノを生産したり使用したりすると、製品/生産高、材料/材料費などの会計仕訳が登録されます。
こうして、企業のすべての業務が、最終的には会計仕訳につながっていきます。このため、会計系のモジュールははSAPの中でも中心的なモジュールだといえます。
会計系のモジュールには、財務会計(FI)と、管理会計(CO)があります。ここで、会計業務フローにおいて起こりうる、会計系モジュールと他のモジュールとの連携をイメージしてみましょう。
- 在庫購買管理(MM)で購買発注すると、請求書が届き、買掛金が発生。この買掛金を元に財務会計(FI)で担当者が支払処理をする
- 販売管理(SD)で受注販売した後、請求伝票を登録、売掛金が発生。その後入金されたら財務会計(FI)で入金処理
- 財務会計(FI)で費用となる会計伝票を登録すると、管理会計(CO)に連携される
財務会計(FI)モジュールには、社外に会社の財務状況を報告する機能があり、BS(貸借対照表)、PL(損益計算書)、CS(キャッシュフロー計算書)といったレポートを最終的に作成することができます。
会計管理(CO)モジュールは、社内の経営に役立てるための原価や収益性のレポートを作成します。
このように、経理や財務領域を担う会計系モジュールは、他の多くのモジュールと連携することで、会計業務の自動化や効率化に活用されており、SAPのモジュールのなかでもとくに重要な機能といえるのです。
情報の一元管理の重要性とニーズにこたえるSAP
ERPシステムを導入していない企業では、それぞれの業務が担当部門内で完結し、情報の一元化がなされていないため、たとえば以下のような問題が起こる可能性があります。
- 販売部門が100個の商品を売り上げた。しかし、在庫システムの更新ができておらず、情報を共有できていない生産部門は追加生産の準備ができない
- 生産部門は、過去のデータに基づいて50個の商品を生産するが、実際には在庫不足のため、50個の欠品が発生する
- 販売部門は、在庫不足のため、納期遅延や注文キャンセルが相次いだ
このようにそれぞれの部門で認識している在庫の個数がバラバラになると、欠品や過剰在庫が発生します。
しかしSAPなどのERPを導入している企業では、業務データを一元管理しているので、業務間での認識のずれはなく、全社のリアルタイムのデータを共有できるため、各部門で在庫個数の認識は同じになります。
企業では、このようにSAPを活用して、情報を一元管理化し経営・業務の効率化をすすめています。
SAPとITスキルで「求められる人材」へ
DX化が進む中、SAPとIT技術とのかけ合わせも可能になり、SAPを扱ううえでもITの知識が重要になってきています。
たとえばスマートウォッチやGPSセンサーのようなIoT(Internet of Things)デバイスは、モノとネットを接続してデータを集約できるので、SAPと連携させればモノの在庫管理や入出庫業務に大きく役立ちます。また、AIとSAPの連携により、工場の品質検査の工程で「画像認識AIソフト」を使い、生産品入庫後に品質管理のモジュールを使って不具合がないかチェックすることも可能です。
このようにITとの連携により、今後のSAPの可能性はさらに広がっていくでしょう。
SAP人材の需要については、現行の「SAP ERP 6.0」が2027年にサポートが終了することが決まっており、すでにSAPを導入済みの企業では最新の「SAP S/4HANA」への移行が検討されているため、SAP人材の需要が高まっているといわれています。そのような状況下で求められるのはSAPの知識、ITスキル、企業での経験のある人材です。
SAP、ITスキルでこれからのキャリアの幅を広げよう
この記事では、SAPの基礎知識、企業のあらゆる情報を一元管理することで、業務の効率化や素早い経営戦略がたてられるツールであり、たくさんのモジュールと呼ばれる機能群で成り立っていることを説明しました。また、SAPの導入企業の多くで、財務会計(FI)モジュールが利用されており、SAPは企業の中心的な業務のひとつである経理・財務領域で重要な役割を担っています。
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