Excel初心者向き 業務効率化に役立つExcel使い方ポイント解説【関数編】
DX化(デジタル技術を活用して業務の効率化や革新する取り組み)が進む現代において、Excelの関数を覚えることは、マクロやVBAのような高度なスキルがなくても、業務の効率化を実現する比較的手軽な手段となります。Excelは多くの企業で日常的に使用されているため、関数を効果的に活用できるスキルは、業務効率化のための基本的なツールとなるだけでなく、転職や再就職時の自己PRとしても大きな強みとなるでしょう。
目次
日常生活での活用例から覚えるビジネスの効率化に役立つExcel関数
Excelの「関数」とは、特定の計算や処理を自動化できるツールのこと。これを使うメリットは、たとえば計算をするときに、Excelの関数を使用すれば、電卓を使った手動計算とくらべ、手入力による計算ミスを防ぐことができます。また、条件に合ったデータを効率的に検索したり、別の表のデータを抽出して表示させることで、業務効率の向上と業務の精度改善に役立ちます。
ここでは、頻繁に使用される関数を日常生活や普段の業務に落とし込むことで、関数の理解を深めていきましょう。よく使われる関数と、それらについて日常生活での使用例をあげながら説明していきますので、Excel操作をイメージをしたり、実際に操作しながら、どのように関数を活用できるのかを確認してみてくださいね。
家計簿や外食時の割り勘にも使えるExcelの関数を覚えよう
■家計簿や外食時の割り勘に使えるExcel関数
まずは、外食時の割り勘や家計簿の管理などに役立つ関数を確認していきましょう。
ビジネスでも多く使われる、数値の合計を計算するSUM関数や、特定の商品名ごとの合計金額を計算するSUMIF関数を使うことで、簡単に支出を管理できます。また、割り勘金額を切り上げるROUNDUP関数を使えば、スムーズに割り勘表を作成できます。TODAY関数やTEXT関数を使って、日付や曜日を自動表示させることも可能です。
①数値を合計するSUM関数(サム)
■SUM関数
数値の合計を求めるSUM関数は、売上や経費の集計など、数値データの合計を求める際に非常に役立ちます。範囲内の数値を自動で合計するシンプルな関数ですが、手計算とくらべるとミスがなく、大量のデータでも瞬時に計算できる点が大きな利点です。
=SUM(数値1,数値2,…)
[数値1],[数値2],…の数値を合計します
外食時の割り勘例では、左の表の「食事代」「飲料代」「その他」の項目のそれぞれの合計を右の表に示し、セルE6からセルE8の数値の合計を、SUM関数を使ってセルE9に求めています。
セルE9に入力する数式:=SUM(E6:E8)
②条件を満たす値の合計を求めるSUMIF関数(サム・イフ)
■SUMIF関数
SUMIF関数は、特定の条件に合った項目の合計を求める場合に便利です。例えば、部門ごとや特定の商品ごとの売上合計、コストや仕入費用などのデータを効率よく集計できます。
=SUMIF(範囲, 検索条件, 合計範囲)
[範囲]内を検索し、[検索条件]に一致するデータの[合計範囲]の数値合計を求めます
「食事代」「飲料代」「その他」の各項目の合計値を、セルE6からセルE8にそれぞれSUMIF関数を使って求めています。
食事代の合計を求める場合、セルE6に入力する数式:
=SUMIF(A2:A11, D6, B2:B11)
③数値の切り上げをするROUNDUP関数(ラウンドアップ)
■ROUNDUP関数
ROUNDUP関数は、割り算後の数値を切り上げる際に便利です。経理処理では、四捨五入するROUND関数や、切り捨てるROUNDDOWN関数と使い分けると効果的です。桁数の指定を「0」にすることで小数点以下を、 「-2」にすることで十の位の数値を切り上げます。
=ROUNDUP(数値,桁数)
指定した[桁数]で[数値]を切り上げます
合計金額を4人で割った後の金額2,080円を、セルE11に以下の式を使って十の位で切り上げています。
セルE11に入力する数式:=ROUNDUP(E10,-2)
数値の四捨五入をするROUND関数(ラウンド)
ROUND関数は桁数の指定を「0」にすることで小数点以下を、 「-2」にすることで十の位の数値を四捨五入します。
=ROUND(数値, 桁数)
指定した[桁数]で[数値]を四捨五入します
④今日の日付を表示するTODAY関数(トゥデイ)
■TODAY関数
TODAY関数は今日の日付を表示する関数で、契約書や請求書など日付が必要な書類を作成する場合に便利です。()=カッコ内の引数は不要ですが、()を省略することはできません。前日の日付を表示させたい場合には「=TODAY()-1)」と記入することで前日の日付を表示します。なお、TODAY関数では日付しか表示されないため、時刻も必要な場合にはNOW関数を使用します。
=TODAY()
今日の日付を表示します
セルE1に入力する数式:=TODAY()
現在の日付と時刻を表示するNOW関数(ナウ)
TODAY関数と同じく、()内の引数は必要ありませんが()の省略はできません。Excelのファイルを開いたり、ファイルの内容を変更した際などに、最新の日付と時刻が表示され、タイムスタンプなどにも使用できます。
=NOW()
現在の日付と時刻を表示します
⑤値を指定した表示形式の文字列に変換するTEXT関数(テキスト)
■TEXT関数
TEXT関数では、数値の小数点以下の桁数を指定したり、通貨形式の文字列に変換するだけでなく、日付に関する変換も可能です。例えば、日付の曜日を自動計算したり、日付や時刻の一部を抽出することも可能です。
=TEXT(値,表示形式)
値を指定した表示形式の文字列に変換します
セルE2に、セルE1の日付をもとに曜日を表示しています。
セルE2に入力する数式:=TEXT(E1,”aaaa”)
ウォーキングの歩数管理にも使えるExcelの関数をマスターしよう
■ウォーキングの歩数管理に使えるExcel関数
ウォーキングの歩数管理表では、外食時の割り勘でも使用したSUM関数を使って月間の歩数合計を簡単に計算できます。また、毎日の目標達成を確認するためには、こちらもビジネスシーンでもよく使用されるIF関数を使用し、目標を達成した日数を求めるためにはCOUNTIF関数が役立ちます。
歩いた歩数の平均を求めるAVERAGE関数、最高記録を表示するためのMAX関数と最低記録を表示するためにはMIN関数も使用することで、ウォーキングの意欲を高めるためのさまざまな数値を確認することが可能です。
①条件によって異なる値を返すIF関数(イフ)
■IF関数
IF関数は売上目標の達成判断や在庫が一定数以下になった場合の警告表示、納期の遅延判定など、条件に基づく自動判定ができます。また、複数のIF関数を組み合わせることで、複雑な条件を判定することも可能です。
=IF(論理式,値が真の場合,値が偽の場合)
[論理式]に指定した条件が満たされていれば[値が真の場合]の値を、満たされていない場合には[値が偽の場合]の値を返します。
まず最初のIF関数で歩数の入力があるかの条件を判定し、未入力であれば空白(“”)を返します。歩数が入力されると2つ目のIF関数でセルD1に設定された「1日の目標」を達成したかどうかの条件を判定します。
「達成」行のセルB5に入力する数式:
=IF(B4=””,””,IF($D$1<=B4,"達成","未達成"))
②検索条件を満たすデータの数を求めるCOUNTIF関数(カウント・イフ)
■COUNTIF関数
COUNTIF関数は、範囲内の数値や文字列を検索し、検索条件に一致するデータの数を求め、マーケティングデータの分析などにも便利です。複数の表や、範囲が複数に渡る場合には、COUNTIF関数を「+」で結合することで、複数の範囲にわたる合計を求められます。数値が入力されたセルの数を求めるCOUNT関数や、空白でないセルを数えるCOUNTA関数と併用することで、より効果的に使い分けられます。
=COUNTIF(範囲,検索条件)
[範囲]内の検索条件を満たすデータの数を求めます。
カレンダー形式の表など範囲が複数に分かれていても、複数のCOUNTIFを使用してデータの数を求めることが可能です。
セルD2に入力する数式:
=COUNTIF(B5:H5,”達成”)+COUNTIF(B8:H8,”達成”)
+COUNTIF(B11:H11,”達成”)+COUNTIF(B14:H14,”達成”)
+COUNTIF(B17:H17,”達成”)
数値の個数を求めるCOUNT関数(カウント)
COUNT関数は、数値や日付、時刻なども個数として数えますが、文字列は個数に含まれません。文字列を含むデータの数を求める場合にはCOUNTA関数を使用します。
=COUNT(値1,値2,…)
[値1],[値2],…の中にある数値の個数を求めます
空白でないセルの個数を求めるCOUNTA関数(カウント・エー)
COUNTA関数は、空白でないセルの数を求めるため、数値や文字列が混在するデータの個数を求める際に便利です。
=COUNTA(値1,値2,…)
[値1],[値2],…の値の内にある、空白でないセルの数を求めます
③平均値を求めるAVERAGE関数(アベレージ)
■AVERAGE関数
AVERAGE関数は売上や成績の平均、平均的な作業時間などデータの中心傾向を把握するのに役立ちます。
=AVERAGE(数値1,数値2,…)
[数値1],[数値2]…の範囲内にある数値の平均値を求めます
AVERAGE関数を使用することで、セルF2に平均歩数を求めています。
セルF2に入力する数式:=AVERAGE(B4:H4,B7:H7,B10:H10,
B13:H13,B16:H16)
④最大値を求めるMAX関数(マックス)
■MAX関数
MAX関数は、指定された範囲内で最も大きい数値を求めるため、成績や売上の最大値など、データのピークを確認したい場合に使用します。
=MAX(数値1,数値2,…)
[数値1],[数値2],..の範囲内で最も大きい数値を求めます
MAX関数を使うことで、セルH1に1か月の歩数のうち最高記録を表示できます。
セルH1に入力する数式:
=MAX(B4:H4,B7:H7,B10:H10,B13:H13,B16:H16)
⑤最小値を求めるMIN関数(ミニマム)
■MIN関数
MIN関数は、指定された範囲内で最も小さい数値を求めるため、費用や支出の最小額などを確認する際に便利です。
=MIN(数値1,数値2,…)
[数値1],[数値2],..の範囲内で最も小さい数値を求めます
MIN関数を使うことで、セルH2に1か月分の歩数のうち最低記録を表示できます。
セルH2に入力する数式:
=MIN(D4:J4,D7:J7,D10:J10,D13:J13,D16:J16)
購入書籍の管理にも使える検索用のExcelの関数を身につけよう
■購入書籍の管理に使えるExcel関数
購入書籍の管理表を使えば、今までに購入した書籍や購入予定の書籍を検索することができます。VLOOKUP関数を使って検索することで、表にまとめている書籍の各データを抽出できるため、所持している書籍の把握や二重購入を防ぐことが可能です。
ただし、検索方法によっては一致するデータがない場合にエラーとなることがあるため、IFERROR関数を併用することで、エラー時に適切なメッセージを表示することが効率化のポイントです。
①別表を縦方向に検索しデータを抽出するVLOOKUP関数(ブイ・ルックアップ)
■VLOOKUP関数
VLOOKUP関数は、指定した検索値を、範囲の一番左の列を縦方向に検索し、結果データを返すシンプルで便利な関数です。ただし、検索範囲の最左列に検索値が存在する必要があること、また抽出する列を検索範囲の左から数えた列番号で指定するため、後から列を挿入すると調整が難しく、表を作成する段階から注意が必要です。
検索方法は近似値を含めて検索するTRUEか、完全一致の値を検索するFALSEを指定します。検索値が一覧にない場合には、検索方法をTRUEとした時は近似値を抽出し、FALSEとした場合にはエラー値が表示されます。
=VLOOKUP(検索値,範囲,列番号,検索方法)
指定した[検索値]を、[範囲]の一番左の列で検索し、その行の列番号に対応する値を返します
セルB2からセルG3の範囲にVLOOKUP関数とIFERROR関数を併用した式を入力し、データ化した所有書籍のリストから、ISBNコードをもとに書籍の所有数やタイトルを抽出しています。
セルB2に入力する数式:=IFERROR(VLOOKUP
($A$2, $A$6:$G$53, 2, FALSE),”未登録”)
ビジネスにも役立つExcelの関数を理解して転職や再就職のためのスキルを身につける
Excelの関数は全てを覚えきれないほど多くありますが、まず、普段の業務や自分の日常生活に使える関数から少しずつ覚えていきましょう。関数名や使用方法などすべてを正確に覚えていなくても、おおまかに理解することで、問題を解決するためのヒントとなり、必要な時にはインターネットなどで検索して活用することもできます。
また、現在進んでいるDX化の流れに伴い、ITの基礎知識を身につけることがますます重要になっています。関数を活用することは、単に業務効率を上げるだけでなく、ITスキルの向上にもつながります。よく使われる関数を覚えることで、転職や再就職時にもそのスキルをアピールすることができるでしょう。