
IT業界未経験でも安心!RPA・SAPでキャリアを始めるためのビジネスIT用語入門
「ITって難しそう」「未経験でもやっていけるの?」——そんな不安を抱えている方へ。とくに、30代以降でのキャリアチェンジを考える女性にとって、IT業界は“遠い世界”のように感じることもあるかもしれません。でも実は、未経験からでも活躍できる道がしっかりと用意されています。
この記事では、特に注目されているRPAやSAPといった分野に関心のある方が、IT業界への第一歩を踏み出すために知っておきたい「ビジネスIT用語」をわかりやすくご紹介します。基礎知識を身につけ、自分らしいキャリアを築いていきましょう。
目次
RPA・SAPとは?そしてなぜ今注目されているのか
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、日々の定型業務を自動化する技術。人手による作業をソフトウェアに置き換えることで、業務を効率化できます。
たとえば、Excelを使った請求書の発行や、受信メールの振り分けや定型的なメール送信など、単純で膨大な繰り返し作業を自動化することで、時間と労力を大幅に削減することができます。
SAPは、企業の基幹業務(会計、人事、在庫管理など)を一元管理できるERP(Enterprise Resource Planning)システムです。
グローバル企業をはじめ日本の中小企業にも導入が広がっており、特に製造業や流通業界では欠かせないツールとなっています。このため、SAPの知識を持つ人材は、国内外問わず高いニーズがあります。
この2つのスキルは、特にDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する今、業界問わず高い需要があります。
IT業界未経験でも、RPAやSAPを扱えるビジネスITスキルを身につければ、これまでの知見や業務経験を活かして“ITと現場の橋渡し役”として活躍することができます。
再就職に強くなる:IT業界で働くための第一歩「デジタルリテラシー」
デジタルリテラシーとは、デジタル技術を活用して業務を効率化・最適化するための基礎的な理解力やデジタルツールを操作する能力を指します。
「パソコンが使える」だけではなく、Excelの関数やクラウドサービスの活用、社内システムの仕組みを理解できる、といったスキルも含まれます。
プログラミングなど高度なIT技術を対象としているわけではなく、たとえば、Googleスプレッドシートでデータを共有したり、Slackでチーム内の連絡を円滑にしたり、Zoomで打ち合わせを主導する力もデジタルリテラシーの一部です。
また、リスキリングを通してSAPやRPAの操作を学び、業務を効率化したり、自動化できるようになったとき、それはまさにデジタルリテラシーを活かした働き方となります。
デジタルリテラシーを身につけるために
デジタルリテラシーを身につけるためには、リスキリング講座の受講と資格取得がおすすめです。
社会のデジタル化、DXが急速に進むなか、年代や職種を問わずすべての働き手が身につけておきたいマインド・スタンス、知識、スキルを示す「DXリテラシー標準」が、経済産業省主導で策定されているのをご存じでしょうか?
DXリテラシー標準は、これからの時代を生き抜くうえでの「学びの指針」とされています。
出典:経済産業省ホームページ
デジタルリテラシー関連資格
デジタルリテラシーを身につけるために学んで取得できる資格はいくつかありますが、近年受験者が増加しているのが、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)がおこなうITパスポート試験。
ITパスポートはITに関する国家資格のひとつで、技術者を目指すというよりは、デジタルリテラシーを身につけるということを目標とし、ITに関する基礎的知識を問われる試験です。
ITパスポート:ITや経営に関する基礎知識を身につけ、現代のビジネス環境で必要とされるデジタルスキルを証明する資格。経営戦略・プロジェクト管理・情報セキュリティ・ネットワークなど、幅広い分野の基礎知識を問われる
また、IPAほかIT・データサイエンス・AIの3分野の団体で構成される官民連携の会議体、デジタルリテラシー協議会が、「IT・ソフトウェア領域」「数理・データサイエンス領域」「AI・ディープラーニング領域」において、全てのビジネスパーソンが持つべきデジタル時代の共通リテラシーを「Di-Lite」として定義しています。
「Di-Lite」習得のためには、ITパスポート試験のほか、データサイエンスの知識を問う「DS検定リテラシーレベル」、AI・データの知識を問う「G検定」の3つの試験が推奨されています。
IT業界で働きたい、という漠然とした思いをもっているなら、まず、IT業界の現在注目されているそれぞれの領域に関する知識を得ることも有効です。
得た知識の証明は、就業に役立てられるため、ぜひビジネスリテラシーを身につけるきっかけとして、資格取得を検討してみましょう。
G検定/DS検定:AIやデータ活用の基礎知識を学び、ビジネス現場での実践力を高めるための民間資格。G検定はAIやディープラーニングの理解を深めることを目的とし、DS検定は統計やデータ分析を通じて課題解決力を養うことを目指す
リスキリング講座の活用
引用元:でじたる女子+
現在社会的に推進されているリスキリングですが、幅広い分野のリスキリング講座から何を選べばよいのか迷ってしまうこともありますよね。
そんなときは、「デジタルリテラシーを身につける」という観点から、現在関わっている、もしくは興味がある職種や業界で必要とされる知識を吸収することから始めてみましょう。
- マナビDX(IPA提供):経済産業省のIT政策実施機関である独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営する講座。ビジネスからAI、データサイエンスまで幅広い分野に対応しており、オンラインで受講可能。
- でじたる女子+(株式会社MAIA提供):女性向けに設計されたリスキリングプログラム。RPAやSAPを含む実践的なスキルのほか、Webデザインや動画編集、ChatGPTの活用方法まで幅広く学べます。オンライン学習に安心のチャットサポート付き。
知っておきたいビジネスIT用語(プロジェクト・マネジメント編)
IT業界における専門用語やビジネス用語を理解することは、現代の働き方に必要な「デジタルリテラシー」の習得にも直結します。
職場や分野によって表現に違いはあるものの、共通して押さえておきたい基本的なキーワードを知っておくことで、IT業界でのスタートがよりスムーズになるはずです。
ここからは、RPAやSAPスキルを活用する際にも知っておきたいプロジェクトマネジメント、ソフトウェア開発に関するITビジネス用語を紹介します。
① プロジェクトの全体像をつかむ用語
📌プロジェクト
目標を達成するために、決められた期間・予算・メンバーで行う「一つのまとまった仕事」。
例)新しいサービスを立ち上げるプロジェクトなど。
📦 成果物
プロジェクトの結果としてつくられたモノやサービス。資料・アプリ・マニュアルなどが含まれます。
🎯プロジェクトマネージャ
プロジェクト全体をうまく進めるための”司令塔”。「スコープ(作業範囲)」「スケジュール(期限)」「コスト(費用)」を管理する役割。
📋プロジェクトスコープ
プロジェクトで「やること・やらないこと」の範囲や目標を明確にすること。成果物の内容や、成果物を完成させるためにどのような作業が必要かを定義します。
② 計画づくりや進行管理に関わる用語
📂 WBS(Work Breakdown Structure)
プロジェクトの仕事を時間やコストを見積もれるように、細かい作業単位に分割すること。プロジェクトの全体像も把握しやすくなります。
🧑💼アサイン
assingは「割り当てる」の意味。各プロジェクトにメンバーとして配置されること。
📊ガントチャート
スケジュールや進行状況を横棒グラフで”見える化”した表。縦軸がタスク、横軸に所要時間を長さで表します。
⛳️マイルストーン
milestoneとは「一里塚」の意味。プロジェクトの重要な節目。例:設計完了、テスト開始などの中間目標。
③ タスクの順番やつながりに関わる用語
🔗アローダイアグラム
タスクの順序関係や依存関係を図で表したもの。矢印で進行の流れを可視化します。
🧩タスクの依存関係
あるタスクが終わらないと次の作業が始められないなどの「つながり」のこと。
🧨クリティカルパス
プロジェクトで最も時間がかかる経路、一連の作業のこと。クリティカルパスを特定することにより、タスクの順序と進行を把握・管理しやすくなります。
④ 成果を出す・トラブルを防ぐための用語
🛡リスク管理
トラブルや想定外の事態を「事前に予測し対策を立てる」こと。
📈KPI(Key Performance Indicator)
プロジェクトの進捗や成果、達成度を測る指標。例:予定された期限内に完了したタスクの割合など、数値でチェックします。
たとえばSAPの導入プロジェクトでは、数カ月単位のスケジュールが組まれ、WBSやガントチャートを用いて細かな進捗管理がおこなわれます。プロジェクトマネージャーは、KPIとして“納期遵守率”や“コスト抑制率”を追いながら、全体を俯瞰してマネジメントしていきます。
こうした用語はプロジェクトの「共通言語」。言葉を理解することは、新しい業界での活躍の扉を開く第一歩です。
知っておきたいビジネスIT用語(ソフトウェア開発編)
IT業界において、RPAやSAPといったシステムも“開発プロセス”を経て形になります。
ここでは、開発の流れの一例を追いながら、基本用語を確認してみましょう。
① ソフトウェア開発で使われるIT用語の全体像をつかむ
まずは、開発の現場でよく耳にするIT用語や考え方の基本を押さえておきましょう。
🌀ソフトウェアライフサイクルプロセス(SLCP)
ソフトウェアの企画、要件定義、開発、運用、保守までの一連の活動。これらの内容はISOによって国際標準化されており、システム開発に関わる人々の間で用語や工程の共通認識を図るために使われます。
📘共通フレーム
独立行政法人情報処理機構(IPA)が主体となって作成する業務プロセスや用語の共通ルール。ソフトウェア開発において共通認識を持つための枠組み。
🤝ステークホルダー
プロジェクトに直接的、または間接的に関わる利害関係者(顧客、開発者、ユーザー、外部ベンダーなど)。
🏢ベンダー
製品やサービスを提供する会社や担当者。開発を外注する際などによく登場します。
💹ROI(Return On Investment)
「利益」を「投資額」で割った値。投資対効果。プロジェクトにかけたコストに対して、どれだけの効果や収益が見込めるかの指標で、値がたかほど費用対効果が高いといえます。
② 要件定義・調達フェーズの基本用語を理解する
要件定義は、ユーザーのニーズを知り、システムに必要な機能や要件を明確にするためのプロセスです。
IT知識と業務理解の両方が求められ、ここでやり取りされる用語について知っておくと、プロジェクトの流れが見えやすくなります。
📄要求定義書
ユーザーが求める具体的な機能や性能、利便性など「何を実現したいか」を文書化したもの。
📑要件仕様書
ユーザーの要求をもとにシステムの機能や性能、制約条件などを具体的に記載したもの。開発者やテスターはシステムを実装・テストする際にこれを参照します。
📮RFI(情報提供依頼書)
開発を外注する際に発注候補のベンダーに対して実績や経験などの情報を要求する文書。ベンダー選定のために、技術力や信用度を測るのが目的。
📨RFP(提案依頼書)
発注候補のベンダーに対し、具体的なシステム設計や予算やスケジュールなどを記載した提案書を依頼する文書。
🔒NDA(秘密保持契約)
お互いに情報を外部に漏らさないと約束する契約。
③ 設計に関する用語を整理する
設計は、要件に基づき、どのような仕組みにするか決める工程。システムの骨格をつくる作業です。
🖥システム要件定義
「どんな機能が必要か」をシステム全体として整理するステップ。システムに必要な機能を「機能要件」、システムに必要な性能を「非機能要件」といいます。
🧱基本設計(ベーシック・デザイン)
システムやソフトウェアの全体的な構造や機能を定義すること。ユーザー目線に近い画面設計・処理の流れなど、システムの大枠を決めます。
🏗アーキテクチャ
ソフトウェアの構造や技術的な枠組みのことで、システムの各部分がどのように互いに関連し、連携するかを定義するような設計の土台となる考え方です。
🔍レビュー、共同レビュー
レビューはプロジェクトの品質向上や問題の早期発見を目的とするチェック、確認作業。共同レビューは開発側と発注側、システム利用者と開発者など異なる立場間で仕様書や設計書などを確認・検証すること。
📐外部設計
おもにユーザー視点の業務機能を設計すること。システム要件定義、システム方式設計のプロセスがあります。
🔩ソフトウェア方式設計
ソフトウェアの構造や構成、インタフェース、データの種類などを整理し、プログラム単位に分割して設計するプロセス。
🔗インタフェース
異なるシステムやコンポーネント同士が情報をやり取りするための“接点”や“仕組み”のこと。もともとの意味は「境界面」であり、機器・ソフトウェア・人など、異なる要素の間をつなぐ役割を果たします。
⚙内部設計
ユーザーからは見えない部分の設計。ソフトウェア要件定義、ソフトウェア方式設計のプロセスがあります。
④ 開発・実装の流れを知る
システムが形になるまでにどのような工程があるのかを知っておくと、やり取りの内容が理解しやすくなります。
🖥ハードウェア
コンピュータ本体・周辺機器など、目に見える物理的な装置。
📦ソフトウェア
アプリやOSなど、コンピュータで動作するプログラムやデータのこと。
💻コーディング
プログラミング言語を使用して、設計書に基づいたコードを記述すること。
🔤ソースコード
コーディングで書かれたプログラムそのもの。
👀コードレビュー
他の開発者がコードをチェックし、バグや改善点を指摘すること。
🧪コンパイラ
ソースコードをコンピュータが理解できる形に変換するツール。
⑤ テストと品質管理にまつわる用語
完成したシステムが想定通りに動くか確認するテスト工程では、さまざまな検証や確認作業が行われます。単体テスト、結合テスト、システムテストなどの段階があります。
🧩単体テスト(ユニットテスト)
各モジュールやコンポーネントなど”部品”レベルで「一つ一つの機能が正しく動くか」を確認するテスト。
🧱モジュール
システムやソフトウェアの中で特定の機能を持つ独立した構成要素のこと。
🐛バグ
プログラムの不具合や誤作動。テストで見つけて修正します。
🔍デバッグ
バグを見つけて修正する作業のこと。
📊バージョン管理
修正内容や履歴を管理することで、複数の開発者が同時に作業でき、過去の状態にも戻れる仕組み。
🧷結合テスト
単体テストを終えた複数のモジュールを組み合わせ、連携して正しく動作するかを確認するテスト工程。
🖥システムテスト
開発したシステム全体が、要件通りに正しく動作するかを確認する最終的な技術的テスト。実際の運用環境に近い条件で、機能・性能・セキュリティなどを総合的に検証します。
🔄運用テスト
本番稼働を想定した環境で、システムが安定して運用できるかを確認するテスト。業務フローや操作手順に沿って、実際の利用状況を再現しながら検証します。
📥受け入れテスト
発注者(ユーザー)が、システムが要件を満たしているかを確認する最終チェック。
⑥ リリース・運用後に必要な知識
リリース後もシステムは使われ続けるもの。安定した運用のために押さえておきたい用語を紹介します。
📦リリース
完成したシステムを「正式に公開する」こと。実際の運用環境に導入し、ユーザーに提供します。
🏗ビルド
複数のソースコードをまとめて、実行できるかたちに仕上げる工程。
🚀デプロイ
ビルドした成果物をサーバやクラウドなどのターゲット環境に配置し、実際に使えるようにする作業。
🔧運用・保守
リリース後に発生する不具合修正や、機能追加・安定運用のためのサポート。
⑦ソフトウェア開発の手法に関する用語
ソフトウェア開発には「ウォーターフォール型」「アジャイル型」「プロトタイピング型」などの進め方があります。
上記で見てきた開発の流れは、ウォーターフォールモデルの一例です。ウォーターフォールモデルは、基本的な開発モデルのひとつであり、比較的大規模なプロジェクトに適した手法とされます。
また、定型作業を自動化するRPA開発には、修正や仕様変更に素早く対応できるアジャイル開発が向く、ともいわれています。
💧ウォーターフォールモデル
システム要件定義・システム設計→プログラミング→テストという開発プロセスを、滝が上から下に下るように順番に進めること。スケジュールを組みやすいが、修正が必要となったときに大変、というデメリットがあります。
🚀アジャイル開発
短期間にソフトウェアの開発とリリースを繰り返し(この反復する作業単位をスプリントと呼ぶ)、仕様変更や修正に柔軟に対応できます。
🧪プロトタイピング
開発の初期段階で試作品(プロトタイプ)を作成し、ユーザーのフィードバックを受けながら改良を重ねていく手法。
🤝DevOps(デブオプス)
開発担当者(Developement)と運用担当者(Operations)が連携して開発する手法。
40代からでもIT業界で働ける理由
「今さら学んでも遅いかも」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実はIT業界で働く人のバックグラウンドは多様で、前職がアパレル販売員、保育士、営業職といった方も多く活躍しています。
特にRPAやSAPのような業務支援型ツールは、現場の課題を理解している人材が重宝される分野。未経験でも、前職の経験を活かせるチャンスがあります。
業務フローを理解していて、どこを自動化・改善すべきかを考えられる人は、とても貴重な人材といえるのです。
また、リスキリング制度やオンライン講座など、今は学び直しが推奨され、費用についてのサポートもある時代。
無料で学べるコンテンツや、補助金の対象となる講座も増えてきています。だからこそ今、ぜひ新しい学びを、自分のライフスタイルに合わせて無理なく始めてみましょう。
人生100年時代、今が「学び直し」のチャンス
「人生100年時代」といわれる今、50代でも60代でも新たな挑戦が当たり前になっています。
この記事で紹介したITビジネス用語の理解や資格取得は、その第一歩となるでしょう。
特別なITスキルがなくても、ビジネスリテラシーを身につけるために学ぶことで、あなたの可能性は広がります。
「興味がある」「やってみたい」——その気持ちを行動に変えることが、未来の働き方を変えていくのです。