IT業界未経験からRPAやSAP人材を目指すために 知っておきたいビジネスIT用語
RPA、SAPのスキルを学び、IT業界未経験からこれらのソフトウェアの開発に携わることを希望するなら、まずはそこで使われる用語について知っておくのも大切です。また、企業のDX化が進むなか、クライアントとしてシステムやソフトウェア開発の場に立ち会うこともあるかもしれません。RPAやSAPも含まれるソフトウェア開発の基本的な流れを追いながら、IT業界未経験者が開発に関わる仕事をする際に知っておきたい用語を見ていきましょう。
目次
未経験からRPAやSAP人材を目指すには
デジタルリテラシーを高めよう
デジタルリテラシーとは、
活用されているデジタル技術に関する知識があること、デジタル 技術を活用する方法を知っていること
引用:厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/content/001211715.pdf
であり、デジタル技術なしで仕事をすることが考えられなくなってきている今、どんな業界であれ働く人すべてにとって重要とされているものです。
このデジタルリテラシーはITを活用するためのITリテラシーを含みますが、プログラミングなど高度なIT技術を対象としているわけではありません。就職を希望する分野でのデジタル技術の具体的な活用事例、デジタルツールやその使用方法を知っておくことが重要とされます。
デジタルリテラシーを身につけるために
デジタルリテラシーを身につけるためには、リスキリング講座の受講と資格取得がおすすめです。
リスキリング講座の受講
マナビDXは、経済産業省のIT政策実施機関である独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営しており、 経済産業省・IPAの掲載基準を満たしたデジタルスキルを学ぶ講座を探すことができます。
また、株式会社MAIAの提供する「でじたる女子+」は、ITの基礎知識からWebデザインや動画編集などの需要の高いスキル、RPAやSAP、ChatGPTプロンプトエンジニアリングなどの高度なITスキルまで、さまざまな講座が受けられるプログラムです。
現在社会的に推進されているリスキリングですが、幅広い分野のリスキリング講座から何を選べばよいのか迷ってしまうこともありますよね。ぜひデジタルリテラシーを身につける、という観点から、現在関わっている、もしくは興味がある職種や業界で必要とされる知識を吸収することから始めてみましょう。
デジタルリテラシーを証明する資格
社会のデジタル化、DXが急速に進むなか、年代や職種を問わずすべての働き手が身につけておきたいマインド・スタンス、知識、スキルを示す「DXリテラシー標準」が、経済産業省主導で策定されているのをご存じでしょうか? DXリテラシー標準は、これからの時代を生き抜くうえでの「学びの指針」とされています。
出典:経済産業省ホームページ
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/skill_standard/20240708-p-1.pdf[/caption]
ITパスポート
デジタルリテラシーを身につけるために学んで取得できる資格はいくつかありますが、近年受験者が増加しているのが、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)がおこなうITパスポート試験です。
ITパスポートはITに関する国家資格のひとつであり、情報セキュリティマネジメント試験とともに、対象が「ITを利活用する者」となっています。技術者を目指すというよりは、デジタルリテラシーを身につけるということを目標とし、ITに関する基礎的知識を問われる試験です。
また、IPAほかIT・データサイエンス・AIの3分野の団体で構成される官民連携の会議体、デジタルリテラシー協議会が、「IT・ソフトウェア領域」「数理・データサイエンス領域」「AI・ディープラーニング領域」において、全てのビジネスパーソンが持つべきデジタル時代の共通リテラシーを「Di-Lite」として定義しています。
「Di-Lite」習得のためには、ITパスポート試験のほか、データサイエンスの知識を問う「
IT業界で働きたい、という漠然とした思いをもっているなら、まず、IT業界の現在注目されているそれぞれの領域に関する知識を得るのが有効です。得た知識が資格として証明されることも就業に役立てられるため、ぜひ資格取得を検討してみましょう。
知っておきたいビジネスIT用語の基本 プロジェクト・マネジメント編
IT業界で使われる専門用語やビジネス用語を知ることは、デジタルリテラシーを向上させるリスキリングの一環ともいえます。現場によって多少の違いはあるかもしれませんが、基本的な用語や概念を知っておくことが、新しい業界で仕事をしていくうえでは一助になるでしょう。
ここからは、IT未経験者でも習得しやすいといわれるRPAやSAPに関するスキルを習得し、就業を目指す際に知っておきたいプロジェクトマネジメント、ソフトウェア開発に関するITビジネス用語を紹介します。
システム開発など「期限内」に「成果物」を完成させる業務は、プロジェクト・マネジメントによって管理されます。まずは、これについての基本的な用語を見ていきましょう。
プロジェクト
プロジェクトは、独自の成果物を作るためのものです。ひとつのプロジェクトの終了時にはひとつのあるいは複数の成果物が期待されます。
成果物
プロジェクトの結果としてつくられたモノやサービス
プロジェクト・マネージャ
プロジェクトを管理する。プロジェクトマネジメントをおこない、「スコープ(作業範囲)」「スケジュール(期限)」「コスト(費用)」の3つを調整し、プロジェクトを成功に導く役割がある。
プロジェクトスコープ
プロジェクトの範囲や目標を明確にする。プロジェクトでつくる成果物、成果物を完成させるためにどのような作業が必要かを定義すること。
WBS(Work Breakdown Structure)
プロジェクトを時間やコストを見積れるくらいの細かい作業単位に分割すること。
アサイン
assignには「割り当てる」などの意味があり、各プロジェクトにメンバーとして配置されることをいう。
ガントチャート
プロジェクトの進捗自体を表す図のこと。縦軸がタスク、横軸に所要時間を長さで表す。
アローダイアグラム
作業の流れを矢印で表し、作業項目の順序関係や依存関係も表すことができる。
タスクの依存関係
あるタスクが他のタスクの完了に依存している状態のこと。
クリティカルパス
プロジェクトにおいて最も時間のかかる経路のこと。クリティカルパスを特定することにより、プロジェクトに影響を与えるタスクの順序を特定し、管理することができる。
リスク管理
プロジェクトで起こりうるリスクを特定し、その発生を最小限に押さえるための計画を立てたり、対策を講じること。
マイルストーン
milestoneは「一里塚」の意味。プロジェクトの重要な節目やチェックポイント中間目標などのこと。
KPI(Key Performance Indicator)
プロジェクトの進捗や成果、達成度を測定するための指標。
知っておきたいビジネスIT用語の基本 ソフトウェア開発編
ここでは、ソフトウェア開発の流れ、ソフトウェア・ライフサイクル・プロセスに関する用語を見ていきます。開発の流れの一例を見つつ、基本用語を確認してみましょう。なお、後述しますが開発にはいくつかの手法があり、各プロセスについて用語を含めて理解を進めておくとよいでしょう。
開発の用語や概念の基礎となるもの
ソフトウェアライフサイクルプロセス(Software Life Cycle Process)
ソフトウェアの企画、要件定義、開発、運用、保守までの一連の活動。また、それらの活動内容を定義した国際規格でISOで標準化されている。システム開発に関わる人たちの間で使われる用語の統一をはかるもの。
共通フレーム
独立行政法人情報処理機構(IPA)が主体となって作成する書籍のタイトル。不定期に刊行される。ソフトウェア開発とその取引を適正化するために、「ソフトウェアライフサイクル」と「システムライフサイクルプロセス」というふたつの規格をまとめ、日本独自のアレンジを加えたガイドライン。
企画
システムを実現するための実施計画を得るプロセス。経営上のニーズを確認し、費用と投資効果を予測するプロセスです。
ステークホルダー
ソフトウェア開発に関わる利害関係者。たとえば、PM(Project manager)、PMO(Project management Office)、エンドユーザー、経営者、企業のシステム部門、ベンダーなどがいる。
ベンダー
外部の業者。 システムインテグレーターなど。
ROI
「利益」を「投資額」で割った値。 ROIの値が高いほど費用対効果が高いといえる。
要件定義
ユーザーのニーズを知るプロセス。システムに必要な機能や要件を明確にします。開発をベンダーに発注する際には、RFI、RFP、NDAなどの文書が発行されます。
要求定義書
ユーザーが求める具体的な機能や性能、利便性などを文書化し、ユーザーが求める仕様を定義するもの。
要件仕様書
システムの要件を詳細に記述する文書。システムの機能や性能、制約条件などを具体的に記載します。この文書は、開発者やテスターがシステムを実装・テストする際に参照するものです。
RFI(Request For Information)
情報提供依頼書。開発を外注する際に発注候補のベンダーに対して実績や経験などの情報を要求する文書。ベンダー選定のために、技術力や信用度を測るのが目的。
RFP(Request For Proposal)
提案依頼書。発注候補のベンダーに対し、具体的なシステム設計や予算やスケジュールなどを記載した提案書を依頼する文書。
NDA(Non-Disclosure Agreement)
機密保持契約、または秘密保持契約。
開発
開発プロセスは、システムを設計・作成し、テスト、納品までがおこなわれます。
●設計
システム要件定義
システムに必要な条件を決める。システムに必要な機能「機能要件」とシステムに必要な性能「非機能要件」という。
基本設計(ベーシック・デザイン)
システムやソフトウェアの全体的な構造や機能を定義すること。
アーキテクチャ
システムの各部分がどのように互いに関連し、連携するかを定義するような設計の構想。
レビュー、共同レビュー
レビューはプロジェクトの品質向上や問題の早期発見を目的とするチェック、確認作業。共同レビューは開発側と発注側、システム利用者と開発者など異なる立場間で仕様書や設計書などを確認・検証すること。
ハードウェア
コンピュータの物理的な構成要素のこと。サーバ、ハードディスク、メモリ、キーボード、マウスなど。
ソフトウェア
コンピュータで動作するプログラムやデータのこと。オペレーティングシステム(OS)、アプリケーションソフトウェア、デバイスドライバなど。
外部設計
おもにユーザー視点の業務機能を設計すること。システム要件定義、システム方式設計のプロセスがある。
ソフトウェア方式設計
インタフェースやデータ種類など、実現すべきソフトウェアの機能や性能をプログラムの単位まで分割するプロセス。
インタフェース
インタフェース(interface)とは「境界面」の意味で、異なるシステムやコンポーネントが相互に通信し、情報を交換するための接点や手段。
内部設計
ユーザーからは見えない部分の設計。ソフトウェア要件定義、ソフトウェア方式設計のプロセスがある。
●プログラミング
プログラマが担当し実際にシステムを開発するプロセスです。システムを構築し動作確認をおこなうことを実装といいます。
コーディング
プログラミング言語を使用して、設計書に基づいたコードを記述すること。
ソースコード
プログラミング言語で掛かれたプログラム。
コードレビュー
他の開発者がコードをチェックし、バグや改善点を指摘すること。
コンパイラ
ソースコードをコンピュータが読むことのできる機械語に変換する機能。
ユニットテスト
各モジュールやコンポーネントが正しく動作するかを確認するためのテストを行う。
バグ
ソフトウェアやシステムにおける不具合や誤り。
デバッグ
コードに潜むバグを発見し、修正する。
バージョン管理
複数の開発者が同時に作業できるようにするため、コードの変更履歴を管理すること。
●テスト
システムが正しく動作するか、仕様通りに動作するか、要件定義で明確にした要件を実現できているか、などを確認します。バグの検出、品質保証がおもな目的です。
単体テスト
プログラムに誤りがなく、システム全体が仕様通りに動作するかを検証する。
結合テスト
単体テストが完了したプログラム同士を組み合わせ、モジュール間のデータの受け渡しなど正しく連携がおこなわれるかを検証する。
モジュール
特定の機能を実装したプログラムの一部。独立した機能を持ち、他のモジュールと組み合わせて使われる。
システムテスト
システム要件(システムの各機能、応答時間などの性能)が仕様通りに動作するかを検証する。
運用テスト
システムが本番環境と同じ条件下で正しく動作するかを検証する。ユーザーがおこなう。
受け入れテスト
システムが契約内容通りに完成しているかをユーザーが確認するテスト。開発者が手助けし、ユーザーがシステムを実際に操作して確認する。
●リリース
完成したシステムを実際の運用環境に導入し、ユーザーに提供すること。
ビルド
ソースコードを実行可能な形式にコンパイルすること。
デプロイ
ビルドしたソフトウェアをターゲット環境(サーバーやクラウド)に配置し、動作させること。
●運用・保守
運用はシステムを本番環境で動かすこと、保守は、必要に応じて保守作業を行い、バグ修正や新機能追加などに対応することです。
ソフトウェア開発の手法
ソフトウェアを開発する手法をいくつかご紹介します。なお、上記で見てきた開発の流れは、ウォーターフォールモデルの一例です。ウォーターフォールモデルは、基本的な開発モデルのひとつであり、比較的大規模なプロジェクトに適した手法とされます。定型作業を自動化するRPA開発には、修正や仕様変更に素早く対応できるアジャイル開発が向く、ともいわれています。
ウォーターフォールモデル
システム要件定義・システム設計→プログラミング→テストという開発プロセスを、滝が上から下に下るように順番に進めること。スケジュールを組みやすいが、修正が必要となったときに大変、というデメリットがある。
アジャイル開発
短期間にソフトウェアの開発とリリースを繰り返し(この反復する作業単位をスプリントと呼ぶ)、仕様変更や修正に柔軟に対応できる。
プロトタイピング
開発の初期段階で試作品(プロトタイプ)を作成し、ユーザーのフィードバックを受けながら改良を重ねていく手法。
DevOps(デブオプス)
開発担当者(Developement)と運用担当者(Operations)が連携して開発する手法。
人生100年時代を生き抜くために
この記事では、
- デジタル技術を利用するためにデジタルリテラシーをどのように高めるか
- 業務効率化に貢献するRPA,SAPスキルを活かしていくために知っておきたいプロジェクト
- マネジメント、ソフトウェア開発に関わる基本的なITビジネス用語
という、IT業界未経験者が新たなキャリアを築いていくうえでのヒントをお伝えしました。
現在は、社会のさまざまな仕組みにおいてデジタルが不可欠であり、IOT(モノのインターネット)、ITC(情報伝達技術)、DX(デジタル・トランスフォーメーション)など、わたしたちは家庭でも仕事でもすべての生活の場においてどのようにデジタル技術を利用するか、ということに向き合うような状態にあります。
デジタルリテラシーを高めることは、幅広い業界へチャレンジするための知識を得ることができる、ともいえます。学びは人生を豊かにしてくれるものです。目標は絞り込まれていても、大まかでもよく、まずは「スタートを切ってみること」が大きな人生の一歩となっていくでしょう。