
RPAは自治体でどのように活用されている? RPA×自治体で描かれる未来と向き合うには
RPA(Robotic Process Automation)とは、パソコンでの定型的な業務(ルーティンワーク)を自動化する技術。じつは、私たちの生活とそうかけ離れたテクノロジーではなく、社会生活を支える自治体の業務などに活用され、普及しつつあります。そして、RPAは地方社会で女性が活躍できる新しいフィールドを広げるカギとしても注目されています。
この記事では、RPA×自治体で描かれる未来、40代・50代の女性がRPAを学ぶことの意義、またそれが地域や社会にどんな価値をもたらすのかを、やさしく丁寧にご紹介します。
目次
RPAは人手不足の解消と柔軟な働き方に役立つツール
RPAとは、パソコン上で行われる単純作業や繰り返し作業を自動化することで、時間と人手を節約する技術です。
従来は人が行っていた業務を、RPAツールで開発されたソフトウェアロボットが担うことで、業務の効率化と人的ミスの削減が可能になります。
たとえば、同じような作業を毎日繰り返している業務、紙の書類をデータ化して管理する業務、メール送信や帳票作成など、これらはすべてRPAが得意とする領域。これまで何時間もかけていた作業が、RPAを導入することで一瞬で処理でき、しかもヒューマンエラーも大幅に削減できるのです。
また、近年「学び直し」を意味する“リスキリング”が、キャリアの選択肢を広げる手段として急速に注目を集めており、RPAはその対象としても注目されています。
RPAツールはノーコードやローコードでの自動化ロボット開発を可能にするものであり、この操作を学ぶことで、たとえば所属する部署の業務、これまで自分がおこなってきた業務などを自動化することも可能になります。
こうした未経験からでも始められるデジタルITスキルを軸にした学びは、業務の効率化で新たな業務へチャレンジしたり、ワーク・ライフ・バランスを改善する時間を生み出してくれるでしょう。
さらに、IT関連の業務はフルリモートで可能なことが多く、在宅ワークで収入を得ることが実現すれば、専業主婦や子育て中の方も柔軟な働き方と自己実現の可能性が広がりますね。
スマート自治体の実現とは?超高齢社会に立ち向かうために
「スマート自治体」という言葉を耳にしたことはありますか?
2040年、日本はかつてないほどの超高齢社会に突入します。出生数は減少し、生産年齢人口も大幅に減ると予測されています。
そんな中、行政サービスをどうやって持続可能にしていくのかが大きな課題となっています。住民基本台帳や福祉、税務といった重要な業務を、限られた人手でこなすのは困難でしょう。
ここで登場するのがRPAであり、パソコン上で行われる膨大な定型業務を、人に代わって正確かつスピーディにこなしてくれる“仮想の職員”のような存在として役立つのです。
RPAの導入により、自治体は以下のようなメリットを得ることができます:
- 住民サービスの質を維持したまま、職員の業務負担が軽減される
- 職員がより価値のある対人業務や企画業務に注力できる
- ベテラン職員のノウハウをデジタルに蓄積し、経験年数などによらず組織全体の質を均一化できる
- 窓口対応のスピード向上や、住民満足度の向上につながる
参考:総務省ホームページ
こうした自治体業務にRPAを組み込む取り組みは、総務省の「スマート自治体構想」に基づいて推進されています。
スマート自治体は、単なるIT導入ではなく、地方の持続可能性を支える社会基盤改革の柱ともいえるでしょう。
自治体×RPAの最新動向とその導入状況
自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進める上で、RPAは以下の7つの重点施策のひとつとされています。
(1)自治体フロントヤード改革の推進
(2)自治体の情報システムの標準化・共通化
(3)公金収納における eLTAX の活用
(4)マイナンバーカードの普及促進・利用の推進
(5)セキュリティ対策の徹底
(6)自治体の AI・RPA の利用推進
(7)テレワークの推進
2023年の調査によると、都道府県では約94%、指定都市では100%がRPAを導入済み。また、市区町村レベルでも67%が導入済みまたは検討中と、急速に広がりを見せています。
RPAの自治体での活用事例には、以下のようなものがあります:
- 統計・調査結果の自動集計
- 住民情報のシステム入力
- 文書作成や定型通知の送信
- 年度末や期末の業務繁忙時の補助作業
- 窓口対応情報の整理と分析
これらは、特別なITスキルがない状態から、スキルを習得してRPA構築・運用できるようになるケースも多く、今後さらに地域に根ざした運用が期待されています。
また、自治体間での共同開発やベストプラクティスの共有も進んでおり、コスト削減と導入効率の両立も図られています。
2019年より総務省が主導する「自治体行政スマートプロジェクト」として、RPAやAIなどのテクノロジーを使った業務プロセスの標準化モデルを構築するプロジェクトが開始されました。
これは、業務プロセスの標準化により、業務効率化のためのRPAシナリオなどを共同利用したり、AIやRPAなどのICTを共同購入して費用を抑えることが目的とされています。

出典:総務省ホームページ
リスキリングで広がる女性の未来——未経験からでも目指せるDX人材
では、こういったRPAに関するスキルはどのように身につければよいでしょうか?
「ロボット開発て難しそう」「ITには自信がない」という声もあるかもしれません。 けれど、RPAはIT未経験からリスキリングを通して習得が可能な技術です。
そして、プログラミングの知識というよりは、業務の内容を理解していることが、実はとても大切で、人生経験の豊富な40代からの女性へのリスキリングに向いているといえます。
たとえば、事務の経験がある方なら、業務の流れをある程度理解できているでしょう。事務経験がないという方でも、日々の生活を通し、サービスの利用者として、データ登録や申請書入力などに対する感覚が備わっています。
RPAの開発、シナリオ作成や運用サポートなどの仕事では、それらの知識や感覚を活かすことがとても大切なのです。
また、IT技術の習得には、オンラインで学べるeラーニング教材も充実しており、家事や育児の合間でも無理なく学習に取り組めるでしょう。
株式会社MAIAが提供する「でじたる女子+」は、RPAやSAP、ChatGPT (プロンプトエンジニアリング)、Webデザインなどのデジタルスキルを学べるe-Learning を提供しており、これらの学びを通して、IT分野でのスキルアップを目指すことができます。
実際にRPAを学び始めたことで、社会復帰、再就職や副業のチャンスを得た女性たちの声も増えてきています。学びのモチベーションを高める受講者同士のオンラインコミュニティも運営されていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
「でじたる女子活躍推進コンソーシアム」が示す、新しい働き方のかたち
女性の地位向上、地域社会での人手不足を解消するために、さまざまな理由で離職したり就業していない女性の活躍も強く望まれる今、地方自治体や企業と連携して、女性のDX人材育成を進めているのが「でじたる女子活躍推進コンソーシアム」です。
株式会社MAIA、SAPジャパン、グラミン日本がこのプロジェクトに参加し、全国各地で「でじたる女子プロジェクト」を展開、eラーニングの提供や就労支援を通して地域の女性たちをサポートしています。
「でじたる女子プロジェクト」での受講をきっかけに、所属先企業の業務効率化に寄与したり、地方の企業のRPA化に携わったり、あるいは自治体の業務改善プロジェクトに関わったりと、「家庭と両立しながら、自分の手で地域に貢献できる」——そんな実感を得られる働き方が、広がってきています。
RPAがもたらす地域社会の変革と女性の自立支援
地方の女性たちがリスキリングによりRPAを習得し、そのスキルを活かした活動をおこなうことは、地域社会そのものを変革しうる力を持っています。
人手不足が続く中、地域の企業や自治体業務の現場では「人にしかできない仕事」と「自動化できる仕事」の線引きが求められているといえます。
この変化の中で、女性がタスクを自動化する新たなDX化の担い手として名乗りを上げることは、地域経済にとっても非常に意義あることです。
女性たちにとって、柔軟な働き方や在宅型の就労形態と相性が良いRPAは、都会のより高単価な仕事を獲得できるなど、経済的自立への助けにもなるでしょう。
このようなRPAのリスキリングを通した人材育成が、地域で進むことは、長期的に地域を支える人材基盤の構築へとつながるのです。
自分と地域の未来を切り拓いていくために
「デジタル化」や「DX化」が社会のキーワードになって久しいですが、これらを進めるデジタル技術要素には、RPAのほか「ABCD」といわれる
- AI(人工知能)
- BI(ビジネスインテリジェンス)
- CX(カスタマーエクスペリエンス)
- DI(データインテグレーション)
そして、サイバーセキュリティやブロックチェーン、クラウド技術などがあります。
聞いたことがある」という人もいれば、「どれも馴染みがない」という人もいるでしょう。
現在、これらの技術は、自治体のDX化のなかで、どれもわたしたちの生活を支える行政サービスにおいて不可欠なものとなってきています。
デジタル社会で生活をし、仕事をしていくには、遅かれ早かれ日進月歩のテクノロジーと向き合っていく必要があるでしょう。
RPAや最新のテクノロジーと向き合い、それらを学ぶことで、私たちは自分自身の未来を、そして地域社会の未来を切り拓いていけるのです。