RPAは自治体でどのように活用されている? RPA×自治体で描かれる未来と向き合うには
RPA(Robotic Process Automation)とは、パソコンでのルーティンワークを自動化する技術。高齢化社会による人手不足が進行するなか、住民への行政サービスの維持を目的として、RPAは自治体の業務に活用され普及しつつあります。RPA×自治体で実現を目指す「スマート自治体」とは、いったいどのようなものでしょうか?
目次
「スマート自治体」の実現はデジタル社会に向けた社会制度の最適化
「スマート自治体」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
2040年ごろ、日本は人口の多い団塊の世代、団塊ジュニア世代が高齢者となり、年間の出生数が100万人に満たない世代が成人を迎えます。この事実は、超高齢化社会、生産年齢人口の減少と深刻な人手不足の時代が、遠からず訪れることを意味しています。
起業や公共団体など社会全体の労働力の不足は、わたしたちが受けているさまざまなサービスの低下や停止につながります。そして、地方公共団体の基幹的な業務には、住民基本台帳業務や税務業務、介護や福祉に関する業務などがあり、これらに関連する住民サービスが停滞すると、わたしたちの生活に大きな影響が及ぶことは想像に難くないでしょう。
こうした社会的課題の解決策として考えられているのが「スマート自治体」です。
RPAは、パソコンを使うあらゆる定型業務を自動化できるため、人が従来行っていた仕事を休むことなく大量にミスなく担うことができることから、人手に替わる「仮想知的労働者」ともいわれています。スマート自治体が、RPAというデジタルレイバーなどを活用することで実現できると考えられていることは
・人口減少が深刻化しても、自治体が持続可能な形で行政サービスを提供し続け、住民福祉の水準を維持
・職員を事務作業から解放→職員は、職員でなければできない、より価値のある業務に注力
・ベテラン職員の経験をAIなどに蓄積・代替→団体の規模・能力の経験年数に関わらず、ミスなく事務処理を行う出典:総務省ホームページ
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000621144.pdf)
とされていて、これらは企業などにおいてのRPAやAI導入でも、同じような効果が期待されます。
スマート自治体の実現に向けた方策としては「行政手続きを紙から電子へ」、というデジタル化が大原則のひとつとして掲げられています。AIやRPAを効果的に活用するにはデータのデジタル化が重要であり、大量の電子的なデータの定型的な入力や参照などは、RPAの得意分野でもあります。
スマート自治体実現化には、2019年より総務省が主導する「自治体行政スマートプロジェクト」として、RPAやAIなどのテクノロジーを使った業務プロセスの標準化モデルを構築するプロジェクトが開始されました。これは、業務プロセスの標準化により、業務効率化のためのRPAシナリオなどを共同利用したり、AIやRPAなどのICTを共同購入して費用を抑えることが目的とされています。
自治体×RPAの現状は?RPAは地方自治体DX化の7本の柱のひとつ
スマート自治体の実現に向けては、自治体のDX化という大改革が進められています。自治体DX推進計画で「重点取組事項」として挙げられているのが、RPAを含む以下の事項です。
(1)自治体フロントヤード改革の推進
(2)自治体の情報システムの標準化・共通化
(3)公金収納における eLTAX の活用
(4)マイナンバーカードの普及促進・利用の推進
(5)セキュリティ対策の徹底
(6)自治体の AI・RPA の利用推進
(7)テレワークの推進出典:総務省「自治体デジタル・トランスフォーメーション (DX)推進計画 【第 3.0 版】」
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000944052.pdf)
2023年の地⽅⾃治体におけるAI・RPAの実証実験・導⼊状況等についての調査では、RPAを導入済み団体数は、都道府県が94%、指定都市が100%。その他の市区町村は36%で、実証中、 導入予定、導入検討中を含めると約67%がRPAの導入に向けて取り組んでいるという結果が報告されています。
AIについては、すべての都道府県・指定都市が導入済み(その他の市区町村は45パーセント)で、音声や文字認識の技術を利用する業務ツールとして、行政サービスなどでの応答を担うチャットボット、マッチングや画像・動画認識による業務効率化の手段などとして活用されています。
RPAの自治体における利用状況
2023年の総務省の調査では、地方自治体でのRPAの活用については、
「財政・会計・財務」「自動福祉・子育て」、「健康・医療」、「組織・職員(行政改革を含む)」への導入が多く、全体的に増加傾向にある
出典:総務省情報流通⾏政局地域通信振興課「地⽅⾃治体におけるAI・RPAの実証実験・導⼊状況等調査」(令和5年12⽉31⽇現在)
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000934146.pdf)
とされています。
地方自治体でのRPAの活用パターン例としては、データのシステム入力、統計・調査・アンケートなどのとりまとめ、情報の検索や取得、情報の参照とそれに対する判断と処理、書類作成などがあげられます。
RPAが自治体の業務にもたらす効果
深刻な労働力不足が懸念される「2040年問題」を待たずして、多くの地方自治体が、人口減少、地域経済の低迷と税収減のなかで、地域住民が安心して暮らせるような行政サービスをどのように維持していくかという課題に直面しています。
2023年の総務省の調査では、地方自治体のRPAの導入効果も紹介されており、人口規模が10万人未満の自治体で年間約4900時間、人口規模50万人を超える自治体では年間1万時間を超える業務時間の削減が報告されています。
デジタル社会でどのようにテクノロジーと向き合っていくか
「デジタル化」や「DX化」が社会のキーワードになって久しいですが、これらを進めるデジタル技術要素には、ソフトウェアロボットにより業務を自動化するRPAのほか「ABCD」といわれるAI(人工知能)、BI(ビジネスインテリジェンス)、CX(カスタマーエクスペリエンス)、DI(データインテグレーション)、そして、サイバーセキュリティやブロックチェーン、クラウド技術などがあります。
「いくつかは聞いたことがある」という人もいれば、「どれも馴染みがない」という人もいるでしょう。これらの技術は、自治体のDX化のなかで、どれもわたしたちの生活を支える行政サービスにおいて活用されつつある、あるいは利用される必要があるものとなっているのです。
デジタル社会で生活をし、仕事をしていくには、多かれ少なかれ日進月歩のテクノロジーと向き合っていく必要があるでしょう。株式会社MAIAが提供する「でじたる女子+」は、RPAやSAP、ChatGPT (プロンプトエンジニアリング)、Webデザインなどのデジタルスキルを学べるe-Learning を提供しており、これらの学びを通して、IT分野でのスキルアップを目指すことができます。
自治体×「でじたる女子活躍推進コンソーシアム」による女性DX人材育成の取り組み
2022年、株式会社MAIAと、一般社団法人グラミン日本、SAPジャパン株式会社の3社は、女性の精神的・経済的自立を促進し、地域と日本の経済の活性化につなげる取り組みとして、「でじたる女子活躍推進コンソーシアム」を設立しました。MAIAからはe-Learningを提供し、地方における女性DX人材育成、就労支援事業として、全国の様々な自治体や団体と連携協定、または事業化された「でじたる女子プロジェクト」を実施しています。
これからの時代を生きていくために、何ができるのか、何をするのか。世界でスタンダードとなってきているテクノロジーを学ぶことも、その選択肢のひとつといえるのではないでしょうか。