40代女性を輝かせる 生き方に迷わないための”心の知恵”

生き方

40代といえば、仕事や家庭生活において、自分なりに「立ち位置」や「居場所」といったものを認識・確立できるようになってくる時期といえます。ミドルエイジにさしかかり、仕事で昇進した、転職した、子育てが落ち着いてきたなど、環境の変化や、体力の低下などの身体的な変化にも直面しうるライフステージ。一方で、晩婚化の進む最近では、この年代で結婚や出産で大きなライフイベントを経験する方もいるでしょう。「人生100年時代」となり、ますます多様性を帯びるこの年代に、これからの生き方について”迷子”にならないような心の持ち方を考えてみましょう。

目次

    40代でこれからの生き方に悩む女性は多い

    40代で、これからの生き方に悩む女性は多いのではないでしょうか。ここでキーワードとしてあげたいのは「新しいことへの挑戦」です。これまでの人生を振り返れば、「やりたかったこと」「できなかったこと」がたくさんあるでしょう。

    人生の半ばにさしかかり、「今のままでいいのかな?」と、誰もが一度は考えるものです。そこで、「やってみたいこと」が心のうちにわきあがるのは、自然な流れといえますよね。そんな「挑戦に対する欲求」を妨げるものとは? 40代女性の悩みをチェックしてみましょう。

    キャリア断絶による不安、仕事復帰へのあせり

    現在、共働き世帯数は専業主婦世帯数の3倍といいます。とはいえ、15~20年前には、両者の数にそれほどの差はありませんでした。(下図参照)結婚や出産を機に退職し、ある程度子育てが落ち着くまでは就業せず、子育てを中心に生活してきた40代女性も多いでしょう。

    子育てがひと段落し、再び就業しようとすると、自分の仕事の経験値を少なく感じて気おくれしたり、休職していた職場に復帰しようとすれば、同僚とのキャリアの差を意識してしまうことも珍しくありません。

    体力が少しずつ低下してきたことも感じるなか、住宅購入、子どもの教育費など、高額の出費もある年代。家計の収入を増やすために仕事復帰を目指したり、復職するなら40代のうちにと気持ちにあせりが生じる反面、親世代の高齢化による介護への不安、子どもの将来についての心配など家庭生活での悩みもつきませんよね。

    出典:内閣府『男女共同参画白書 令和5年版』

    「今のままでいいのかな?」と思いつつ自分にとっての「安定」を手放せない

    40代は、体力も少しずつ落ちてきます。そんななか、とくに女性は子どもの受験や夫の多忙などにより、自分のためよりも家族のために優先して時間を使いがちです。

    「今」の生活に手一杯で、専業主婦ならば「社会に出てみたい」「また仕事をしてみたい」、キャリアをもつ女性なら「キャリアアップしたい」「新しい仕事をしてみたい」などと思う反面、「今の生活を崩したくない」「新しいことを始めるのがおっくうだ」と感じることも。家族や友人など周囲からの「新しい挑戦」に対する反対の声を気にすることもあるでしょう。

    「家族」のあり方が変化し将来を予測できない

    この半世紀で、家族のあり方は大きく変化しました。40年前の国勢調査では、「夫婦と子供」の世帯、「3世代等」の世帯が一般家庭の約6割を占めていましたが、2020年には「単独世帯」と「ひとり親と子供」の世帯とが全体の約半数近くを占めています。

    自分自身が子どものころから属してきた家族とは、ちがったあり方の家族を形成している方、または40代を独身で過ごす方も多くいるでしょう。生まれ育った家庭や社会にロールモデルを見出せないと、将来の生活不安に関する悩みも出てきます。

    出典:内閣府『男女共同参画白書 令和5年版』

    そもそも”モヤモヤする”年代  ミッドライフ・クライシスを乗り切るために

    「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」とは、おもに40~50代のミドルエイジ、人生の中期に差し掛かった人が陥る精神的な危機のことです。アメリカの心理学者ダニエル・レビンソン(1920-1994)によって明らかにされました。

    レビンソンは人生の発達期を「児童期と青年期」「成人前期」「中年期」「老年期」の4つに分け、それを「春夏秋冬」で表現しました。中年期は、人生の秋。この人生の半ばに差し掛かる時期に、「若さ」と「老い」、「創造」と「破壊」、「愛情」と「分離」など、相反する感情などのはざまで葛藤したり、アイデンティティが揺らいだりするといいます。

    体力の衰えを自覚するなか、「やりたかったこと」「やりたいこと」への実現可能性に悩んだり、「今のままでいいのかな?」と自問したりと、先にあげた悩みも、このミッドライフ・クライシスといえます。ほとんどの人がこの危機を経験し、40代の多くの人が共有している悩みなのです。

    この心理的な危機を乗り越えるヒントを、同じく人生における人間の心のあり方を見つめた女性の精神科医、神谷美恵子(1914-1979)の著書『こころの旅』から探ってみました。

    「やってきたこと」「できたこと」に目を向けてみる

    満足のゆくこころの旅をするためには、人間は自分以外の人やものごとに力を注ぎ、その「世話」をするのようにできているらしい

    出典:神谷美恵子『こころの旅』みすず書房, 2005年

    生み、育むといえば、子どもの存在をまず思い浮かべるでしょう。一方で、わたしたちは、仕事や家庭生活の中でつねに何かを生み出しています。アイデア、書類、物理的なモノ、情報や映像コンテンツなど物理的ではないモノ、料理、ガーデニングによる庭の風景など。

    『こころの旅』では、25~55歳までを「はたらきざかり」ととらえ、わたしたちはこれら生み出したものに対して、責任を負い続け、そのための困難や苦労に打ち勝ちながら生きていくときに、心は充実を感じ、真に生きている実感を持つ、と語られています。

    「今までできなかったこと」や「これからやりたかったこと」について、あるいは「今のままでいいのかな?」を悩み考えるとき、「今までやってきたこと・できたこと」にも心を寄せてみましょう。自分が生み出し、育むことに力を注いできた人やもの。これまで人生を充実させてきたその経験値に無駄なものはなく、これからの自分を輝かせる種となるはずです。

    仕事や家庭生活で得た知識やスキル、人とのつながり。これらの原資が自分にあることを確認すれば、新しい目標やチャレンジする自信も生まれるのではないでしょうか。目標と挑戦を育む過程も楽しみつつ、第一歩を踏み出せるといいですね。

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    「仕事と家庭の両立」はIT技術と家族に頼る

    『こころの旅』では、仕事と子育ての両立について、現代日本では時間的・体力的な困難も伴い、女性は男性よりも多くの知恵と工夫とエネルギーが必要とされることが書かれています。この文章が初めて世に出たのは、1974年。この半世紀で、家族のあり方が大きく変化してきても、女性の家事負担、仕事と家庭の両立の大変さは、あまり変わっていないようですね。

    この両立には、女性の内に「柔軟な努力を持続する用意」が必要で、その柔軟さとは、「家庭という生きもの」の必要性に応じて「自己を制御する能力」、「終局的には人生に対する弾力的な適応性」と説明されています。

    半世紀前と現在で大きく変化したのが、テレワークのような「柔軟な働き方」です。この本が書かれた当時は、女性側にのみ必要とされた「柔軟さ」が、女性の努力だけでなく少しずつ社会の働き方にも浸透してきているといえます。

    仕事だけでなく、趣味やコミュニケーション、社会参加などが、今はインターネットという情報技術によって、物理的な移動がなく可能です。これからのチャレンジは、インターネットなどのIT技術にバックアップされたものとなる場合が多いでしょう。

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    仕事と子育ての両立についてはさらに、子育てで「分業」と「協力」の体制をとる中で、夫婦の結びつきは「同志愛」のような要素に占められるといい、この結びつきが力強いきずなとなり、家族全体が育っていく、と書かれています。そして、女性が仕事を持つことに対し次のように前向きな言葉が記されています。

    もし夫婦ともにそれぞれしごとを持ち、それゆえになおいっそう「同志的」に助け合えるならば二人のきずなは新鮮なものでありつづけ、子どもたちも過保護の圧力を免れ、家庭内のふんい気はのびのびとした、多彩なものになるだろう

    出典:神谷美恵子『こころの旅』みすず書房, 2005年

    シングルマザー家庭なら、「夫婦」を「親子」に、「しごと」を「自分の世界」に置き替えてみるなど、自分自身の家族のかたちに合わせて、示唆に富んだ言葉として心に留めておくとよいかもしれません。

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    人生を輝かせるもの

    あなたの人生を輝かせるものは何でしょうか?

    仕事、趣味、家庭生活、どれもが人生の大きな割合を占める要素です。前述した、「生み育むことで心の充実を得られる」という言葉を参考にすると、これら人生の要素のなかで、自分が好きなこと、やりたいことを高めていくことは人生を輝かせるひとつのヒントとなるのではないでしょうか。

    一見、これまでの人生とは関連のない、まったく新しい目標と思えるものも、これまでの経験を見直せば、きっと自分のなかに土台となるものが見つかるはずです。まだチャレンジするには十分な体力があり、豊富な人生の経験値もあるのが、40代の強みといえるでしょう。

    この記事で参考にしてきたレビンソンも神谷美恵子も、中年期の悩みや葛藤の先に「新しい自分」があるという意味のことを語っています。どんなことにも、年齢に気後れすることなくチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

    新しいチャレンジに向かって目標を設定し、学びなどの努力をしていくことやセカンドキャリアを築くことを「目標を生み育てる」ことととらえると、新しいチャレンジに向き合うことこそが、人生を輝かせるともいえるかもしれません。

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